UIテストは、UI(ユーザーインターフェース:User Interface)を持つあらゆるソフトウェアの品質を保証するために不可欠です。
UIテストを適切に実施するためには、どのような観点・やり方で実施すべきかを把握することが重要となります。
今回はUIテストとは何か、基本をまとめて解説します。UIテストを自動化するツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1.UIテストとは?
UIテストとは何か、実施する目的について解説していきます。
1-1 UIテストとは
UIテストとは、ソフトウェアにおけるUI(ユーザーインターフェース)の品質を検証するテスト手法です。UIとは「ユーザーとソフトウェアの接点」であり、ユーザーが見たり操作したりする要素のことを指します。
たとえば、ユーザーの目に入るテキストや画像、ユーザーが操作するボタンやメニューなどがUIの代表的な要素です。UIテストでは、こうしたUIの要素に着目した検証を行います。実際にソフトウェアを動かし、UIの表示に問題がないか、操作した際に正しく振る舞うか、などを検証します。
1-2 実施する目的
UIテストを実施する主な目的は、UIが仕様や設計に沿っているか、品質に問題がないかを確認することです。
UIは、ユーザーがソフトウェアと対話し、その価値を享受する重要な部分といえます。そのUIに「不備」や「不親切」があれば、その価値を十分に伝えられず、ユーザーの満足度が低下してしまいます。UIテストは、こうした問題を検出するために不可欠です。
UIテストを通じて問題を検出し対処することで、ユーザーにとって理想的なUIの実現につながるでしょう。
2.UIテストの主な5つの観点
UIテストで確実にUIの問題を検出するためには、実施するうえでの観点を把握することが大切です。UIテストの観点はさまざまですが、ここでは代表的な5つを紹介します。
2-1 表示項目の妥当性
UIテストでは、表示項目の妥当性確認が欠かせません。ボタンやアイコンなどの配置やサイズ、配色などが仕様通りであることをチェックします。テキスト情報については表示内容の正しさだけでなく、フォントや文字サイズ、改行位置などのチェックも必要です。
また、仕様通りかどうかに関わらず、表示項目の視認性や可読性の問題もチェックすることが求められます。たとえば、長い文字列が収まりきらずに表示が欠けてしまわないか、といった部分もチェックすべきポイントです。
2-2 動的な要素の挙動
UIテストでは、動的な要素の挙動も必ずチェックします。「動的な要素」とは、ユーザーの操作内容やソフトウェアの状態に応じて表示や挙動が変化する部分のことです。
たとえば、ボタン押下時に想定通りの表示に切り替わるか、アニメーションがスムーズに動作するか、といった観点が挙げられます。ユーザー操作に対する応答速度や自然さなどもチェックが必要です。
2-3 利用環境ごとの適応性
UIテストでは、利用環境ごとの適応性もチェックが求められます。ソフトウェアの種類にもよりますが、ユーザーが利用するデバイスやOS、ブラウザなどはさまざまです。画面のサイズや解像度などが異なる利用条件にも正しく適応できるかをチェックします。
たとえば、パソコンでは表示に問題はないものの、スマートフォンだとレイアウトが崩れてしまうケースが考えられます。デバイスや画面サイズに合わせて適切な表示・挙動となるかチェックすることが重要です。
2-4 エラー処理
UIテストでは、エラー処理のチェックも必須です。エラー処理が不適切だと、ユーザーがエラーを解決できないばかりか、危険な状態で処理が続行される恐れもあります。そのため、異常な操作や入力に対して適切なエラー処理が行われるかのチェックも重要です。
たとえば、仕様の範囲を超えたデータの入力時にエラーとなるか、異常なデータのまま処理が実行されないか、といったチェックが考えられます。あわせて、エラーメッセージの分かりやすさもチェックしましょう。
2-5 ユーザビリティ
UIテストでは、ソフトウェアの「ユーザビリティ」も重要な観点の一つと言えます。ユーザビリティとは、ユーザーが目的をスムーズに達成でき、満足感を得られる度合いのことです。見やすさや使いやすさ、覚えやすさといったユーザー視点の体験が含まれます。
たとえば、通知メッセージは見やすいか、ボタンは押しやすい場所に配置されているか、といった観点が挙げられます。ユーザー視点でUIの問題を検出することで、ユーザー体験の向上につなげることが可能です。
なお、UIテストの中でもユーザビリティに着目するものを「ユーザビリティテスト」と呼びます。ユーザビリティテストについて詳しくは、次の記事を参考にしてください。
3.UIテストの大まかな進め方
ここでは、UIテストの大まかなやり方を紹介します。UIテストは、次の5ステップに分けて進めていくことが基本です。
- テスト計画
- テストケースの作成
- テスト環境の準備
- テストの実行
- テスト結果の分析
3-1 テスト計画
まずは、テスト計画を通してUIテストの基本事項を整理し、どのように進めていくかを明確にします。
UIテストの対象(画面や機能)、実施範囲(デバイスやブラウザなど)、テスト方法(手動/自動)といった基本事項の検討が必要です。
また、開発スケジュールや人的リソースを踏まえて、どのような日程で進めていくかも決めましょう。
3-2 テストケースの作成
次に、UIテストの具体的なテストケースを作成します。テストケースには、チェックする観点や前提条件、操作手順、期待値などの情報が必要です。
テストケースが不足していると、UIの問題を見逃してしまう恐れがあります。UIの品質を確実に保証するために、必要なテストケースを漏れなく作成しましょう。
3-3 テスト環境の準備
続いて、UIテストを実行するためのテスト環境を準備します。UIテストに必要なデバイスの調達やソフトウェアの導入、テストデータやテストアカウントの作成などが必要です。
特に、ユーザーの利用環境を把握し、その環境に即したテスト環境を準備する必要があります。
例えば、テスト対象がPCアプリなのか、スマートフォンのアプリなのかによって、準備する機材が変わります。利用環境を意識した環境の準備を行うようにしましょう。
また、テストを自動化する場合は、テストツールの設定やテストスクリプトの実装も行います。この段階でテストケースに優先順位を付けておくと、効率よく実行できます。
3-4 テストの実行
そして、準備したテスト環境を用いてUIテストを実行します。手動テストの場合、テストケースに従ってUIを操作し、期待値通りとなるかをチェックするのが基本的な流れです。
キャプチャツールで実際の表示を記録しておくのが理想といえます。明らかな不備や気になる点があれば、忘れずメモしましょう。
自動テストの場合、テストスクリプトを実行し、その結果を確認する流れとなります。
3-5 テスト結果の分析
テストケースをひと通り実行した後は、テスト結果を分析します。NGとなったテストケースについては事実確認が必要です。
本当に問題が発生しているのか、確認ミスやテスト実行の不備はなかったのか、などを明確にしましょう。
また、機能や画面ごとのNG数や、NGの内容などから傾向を分析することも大切です。最終的な分析結果はレポートにまとめ、関係者に共有しましょう。
4.UIテストを成功させる3つのポイント
UIテストは、ポイントを知らずに実施すると失敗してしまう場合もあります。UIテストを成功させるために、次のポイント3つを押さえておきましょう。
4-1 明確なテストケースを作成する
UIテストでは、明確なテストケースを作成することが大切です。
なぜなら、テストケースが曖昧だと、テスト担当者がその意図を把握できず、操作ミスや確認ミスにつながるからです。たとえば「正しく表示されること」という期待値では、何が正しいのかをテスト担当者が判断しなければなりません。
このような不確実性をなくすために、誰がテストケースを読んでも同じテストを実行できるような、具体的で明確な表現を使いましょう。
4-2 幅広い利用環境で検証する
UIテストでは、幅広い利用環境で検証しましょう。
特定のデバイスやブラウザの組み合わせのみ、UIが正しく表示されないケースもあります。そのため、ユーザーの利用環境として想定される組み合わせは、できる限り網羅することが理想です。
さまざまなユーザーの利用環境をテストでカバーすることで、バグを見逃すリスクを軽減できるでしょう。
4-3 ツールによる自動化も検討する
UIテストは、ツールにより自動化するのがおすすめです。
UIテストは多岐にわたる観点・利用環境で検証する必要があり、テストケースが膨大になる傾向があります。手動テストで一つ一つ実行していくのは時間がかかるばかりか、人的ミスも発生しやすいです。
そのため、テストツールでUIテストを自動化し、UIテストの負担軽減・品質向上を図りましょう。
5. UIテストを自動化できる代表的なツール
手動のUIテストから脱却したい方は、自動化に適したツールの活用を検討しましょう。ここでは、UIテストを自動化できる代表的なツールを2つ紹介します。
5-2 T-DASH
出典:T-DASH
「T-DASH」は、バルテス株式会社が提供するテスト自動化ツールです。WebアプリケーションやWindowsアプリケーションのUIテストを自動化できます。日本語で記述したテストケースからスクリプトを生成でき、プログラミングスキルが必要ないことが特長です。
1ライセンス4,840円(税込)とリーズナブルな価格で、導入コストを抑えやすいのも強みといえます。「テストコードを実装できる人材がいない」「テスト自動化の経験が少ない」といった場合は、T-DASHを活用してみましょう。
5-2 Selenium
出典:Selenium
「Selenium」は、ブラウザ操作を自動化するためのフレームワークです。オープンソースで提供されているため、基本的に無料で利用できます。テストコードを記述することで、ブラウザ操作をともなうWebアプリケーションのテスト自動化が可能です。
ただし、Seleniumを利用するためには基本的にプログラミングスキルが必要となります。「テストコードを実装できる人材がいる」「費用をかけずにテスト自動化したい」といった場合は、Seleniumを活用してみましょう。
テスト自動化ツールについては以下の記事もご覧ください。
まとめ
UIテストとは、ソフトウェアにおけるUI(ユーザーインターフェース)の品質を検証するテスト手法です。
表示項目の妥当性や動的な要素の挙動など、さまざまな観点からUIの品質に問題がないかを確認します。
ただし、高品質なUIテストを実施するためには、多くのテストケースが必要です。
UIテストの負荷軽減や品質向上を図りたい場合は、テストの自動化も検討しましょう。UIテストを実施する際は、今回の内容を参考にしてみてください。