【隣のQAに聞く #1 - 前編】「QA&テストの技術でソフトウエア産業を救いたい!」 株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)山本 久仁朗 氏

最終更新日時:2021.05.20 (公開日:2021.05.11)
【隣のQAに聞く #1 - 前編】「QA&テストの技術でソフトウエア産業を救いたい!」 株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)山本 久仁朗 氏

今回インタビューを受けてくださった方

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山本 久仁朗 (やまもと くにお)氏

株式会社ビズリーチ(Visionalグループ) QA基盤推進室

株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)所属。2018年10月より同社QAチームに参画。QA基盤推進室の6つのグループのマネージャーを兼務して、現場を統括。各事業部に寄り添う活動と、横断的なテスト・QAの教育・育成・啓蒙活動を牽引。
社外活動としては以下の通り。
・2008年から2010年まで、WACATE(若手テストエンジニア向けワークショップ)実行委員として活動
・全国の JaSST 等において、「キャリア」「ゲームテスト設計」「Web QA」をテーマに登壇
Twitter: https://twitter.com/gen519

今、さまざまな現場でQA業務に携わっている方々の「声」をお届けする『隣のQAに聞く!』。QA・品質向上の重要性がますます増している中、他のチームでは、どのようにQA業務が行われているか、気になっているエンジニアの方も多いと思います。本記事では、その取り組みや「心意気」などを伺い、皆さまにお伝えします。今回は、全2回にわたって、株式会社ビズリーチ(Visionalグループ) QA基盤推進室の山本 久仁朗 (やまもと くにお)さんにお話をいただきます。

  • 「QA」が人に喜ばれる仕事だと実感して"QA一辺倒"の道を選ぶ
  • 「Visionalグループ」で展開されているQA業務の例
  • 「のびしろ」を捉えて、業界全体が加速しやすい状況へ

「QA」が人に喜ばれる仕事だと実感して"QA一辺倒"の道を選ぶ

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―― はじめに、これまでのご経歴を教えてください。

山本氏:平成元(1989)年から、さまざまなところで仕事をしています。最初はSIerで、製鉄所のシステムや物流配送システムなどを組んでいました。

ターニングポイントのひとつは、1998年ごろ、コンパック(Compaq)というコンピュータ会社からサーバー構築ソフトの検証依頼があって、そこに私がアサインされ、アメリカに半年ぐらい出張したことです。

それまで、テストは新人SEの仕事で、逆に、最後の総合テストは熟練した人の仕事といったイメージを持っていました。ところが、アメリカに行ってみると、デベロップマネージャーとQAマネージャーが対等に議論しあっていたのです。「QAって、こんなことまでできるんだな」と思い、大きく印象が変わりました。

もうひとつのターニングポイントは、ソニーに技術派遣に行ったことです。ちょうど『VAIO』が立ち上がり、互換性検証などをやりはじめた時期でした。開発の人たちに「バグを見つけてくれてありがとう」っていってもらえました。自分がいるSIerだったら行程が遅れてしまうことに対して叱られてもおかしくない場面です(笑)。ところが「この問題がお客様のところで見つからなくて良かった」と喜んでくれたのです。

このとき、QAは人に喜ばれる仕事だと実感でき、QAとして目指す姿が見えてきました。そして、そこから20年ほど、ずっとQA一辺倒でやってきています。

―― 「2000年問題(Y2K問題:Year 2000 Problem)」などでQAにも注目が集まりはじめた時期ですね。

山本氏:そうでしたね。「2000年問題」は、当時、下火だったCOBOLの技術者が探されるといった話題もあり、品質保証という意味でQAが注目されたきっかけだったと思います。テスト業務としてのQAが注目されたのはその後の「携帯バブル」のときかもしれません。

そのころは、まだテストに関する情報があまりなく、雑誌も本も少なかったですね。『ソフトウエア・テストPRESS』(技術評論社)という技術専門誌がありましたが、おそらく、テスト人口が急に増えた時期と刊行が重なっていると思います。そういう流れを経て、QAやテストが業務として脚光を浴びようになってきたと感じています。

―― まさに、日本のQAの歴史をずっと見てこられたという感覚でしょうか?

山本氏:本当のQAの歴史でいいますと、日立製作所のシステムSEの方々が、1960年代から品質保証に取り組まれてきたのが最初だと思います。奈良隆正氏をはじめ、多くの有名な方々が在籍されていました。それ以前には、菅野文友氏といった方々が品質保証の礎を作られています。そういったことからすると、私が辿ってきた道はWeb業界でのテストと品質保証に関してだと思っています。

―― 若いエンジニアの方と話すと、テストを嫌がる人がわりと多い印象を受けるのですが、山本さんの場合は自然に「QA一辺倒」となっていかれたのですね。

山本氏:私は、パズルを解くのがけっこう好きです。言い替えると「ロジックの穴」を見つけるのが好きということになります。開発をしていた頃も、テストやレビューで、そういったポイントを見つけては会社の先輩に喜ばれていました。

それで、テストやQAをして不具合を見つけて、意外と人に喜んでもらったり、前向きなフィードバックをいただいたりするうちに、自然に「QAをやっていこう」と感じられたのだと思っています。

―― 続けていくうちに、さらにQAに魅力を感じられたことはありますか?

山本氏:はじめのうちは狭い意味でのQAといいますか、いわゆる最終工程のテストに近い状態でのQAをしていましたが、やっていくうちに、いかに不具合を出さないようにするかという、根本原因の改善を考えるようになっていました。広義でのQAというか、TQM(Total Quality Management)に近い考え方で、プロジェクト全体、場合によって組織全体で品質を考えるようになって、一気にスコープが広がったように感じています。

そのとき、お客様に届けるモノ、サービスの価値を高めるためだったら、何をやってもいいんじゃないかと思えるようになって、QAに対するモチベーションがさらに上がりましたね。

「Visionalグループ」で展開されているQA業務の例

―― 今、Visionalグループでは、どのようなQA業務に取り組んでおられますか?

biz_yamamoto_001.PNG山本氏:現在、QA基盤推進室のマネージャーとしてQA業務を推進しています。組織が立ち上がってから2年半がたちました。実はそれまで、Visional(20202月に株式会社ビズリーチがグループ経営体制に移行したことで誕生)はQA部署がない状態で、約8年間サービスを展開していました。そのため、さまざまな課題が溜まっている状態からスタートしています。

そのような背景もあって、順番に各事業部に入っていく形で進めてきました。新しい事業部から依頼を受けたとき、まず、どういう体制でやっているとか、どういう要件があるのかという点をヒアリングして、QAチームを作り込んで、3ヶ月から半年ぐらいは一緒に走りながら業務を進めています。

基本的な業務の流れを見て、場合によっては開発側や、事業長といろいろ調整をして進め、座組みたいなモノを作ったら、次の事業部に移っていく感じです。このように新規開拓をして整えたら、次の新しいフィールドに移っていくことをひたすら繰り返して、今やっと、各事業部にQAチームを一通り配置できるようになったところです。

今は、2周目に入ったところで、今度は各チームの技術力を上げ、最適化していくターンに入っていると思っています。

―― 業務全体を改善していく取り組みをされているのですね。

山本氏:QA基盤推進室は、当初、3人ではじまりました。そのとき、直近で「できることをやる」と考えて、QAチームはいきなりプロセス改善からスタートしています。まず、BTS(Bug Tracking System)に溜まっていた情報や障害、不具合の傾向を見たり、エンジニアへのヒアリングをしたりして、どういう課題があるかを分析してから、プロセス改善に取り組みはじめたのです。

―― Visionalでは、取り扱っている情報量も外部との繋がりも多く、見なければならないポイントが膨大ではないかと思うのですが、大変ではないですか?

山本氏:リポジトリとか、情報のひとつひとつというところまで考えるとそうなりますが、抽象化することで、それほど複雑ではない状態に持っていくことができます。

加えて、開発自体がアジャイルに近い状態で、当時、2週間のスプリントで進めていました。そのスプリントの中で「どう動くか」ということだけを考えれば、まとまりましたので、それほど大変とは感じなかったですね。

「のびしろ」を捉えて、ソフトウエア業界全体が加速しやすい状況へ

――御社は4月22日に東証マザーズに上場されますが、上場を前に全体の業務プロセスを改善する狙いもあったのでしょうか?(※本インタビューは3月に実施)

biz_yamamoto_001.PNG山本氏:組織の立ち上げ当初は上場の話はありませんでした。自分としては、会社の「のびしろ」を見つけて、成長させていきたいと考えていました。

―― なるほど。「のびしろ」の部分を意識されているのですね。

山本氏:はい、よく見ています。テストやQAの業務をされている方は、感覚的にお分かりいただけると思いますが、進捗状況が、例えば10段階あるとして、そのレベル(段階)を最初に「0」から「1」へひとつ上げるのは楽です。しかし、これがレベル「5」とか「6」になってくると、ひとつ上げるのは相当難しいと感じられると思います。終盤に入って、最後に「10」に上げるとなると、最初の2レベルとは比べものにならないくらい厳しくなります。

私は「QA&テストの技術でSW産業を救いたい!」と考えています。そこで、テストの体制がまだ未熟な現場には、最初に絶対にやっておいた方が良い"鉄板の話"を伝えるようにしています。例えば「JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)」の「Foundation Level」の社内研修をやることなどがそうです。こういった取り組みをして、基本的な部分ができるようになったら、次のステップに進んでもらうといった活動をしています。

そういう意味でいうと、できるだけ「のびしろ」があるところで私が活動した方が、ソフトウエア業界全体が加速しやすい状況になっていくと思っています。Visionalは、新しいリクエストも多く、「のびしろ」も多いと感じているところです。

―― 先ほどパズルがお好きだと伺いましたが、仕事をパズルのように捉えて、「解きがい」があるパズルに挑戦されているイメージでしょうか?

山本氏:そうですね。それはあるかもしれません。

―― いろいろお話しくださり、ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

執筆者:Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。