「Internet Explorer」ついに歴史に幕。サポート終了に伴う影響と企業が行うべき対処とは?

最終更新日時:2021.09.27 (公開日:2021.09.28)
「Internet Explorer」ついに歴史に幕。サポート終了に伴う影響と企業が行うべき対処とは?

いよいよInternet Explorer11(以下、IE)のサポート終了に向けてカウントダウンが動き始めました。サポート終了後、当面は米Microsoftの開発した「Edge」に搭載された「IEモード」で対応する形になります。IEについては以前からセキュリティ上の懸念が叫ばれていましたが、企業内の基幹システムなどでは使い続けられている状況が続いていました。終了となった場合、どこに影響が生じるのか、サポート終了後のリスクはどこにあるのか、また、果たしてIEモードでどの程度互換性が担保できているのか、といった懸念点が挙げられます。

本稿では、Qbookで調査した「Internet Explorerに関する実態調査」を参考に、実際のIE対応プロジェクトへの加入経験のあるエンジニアから話を伺いました。

2022615日、IEサポート終了。代替はEdgeの「IEモード」へ

Microsoftが正式発表。終了後はEdgeにリダイレクト

Microsoftは、Windows10でブラウザのInternet Explorer11のサポートを2022615日(日本時間の2022616日)に終了すると発表しました。

サポート終了後は、IEのデスクトップアプリを利用しようとすると Microsoft Edge(以下、Edge)にリダイレクトされる形になります。そのため、IEのみで動作するコンテンツについては、IEでの閲覧ができなくなってしまいます。

IEと下位互換するEdgeの「IEモード」

その救済措置として、米MicrosoftIEベースのWebサイトやアプリを使っている企業にはサポート終了までにEdgeIE モードへの切り替えを勧めています。

IEモードとは、Edgeの下位互換機能で、IE対応のWebサイトやアプリを自動で判断し、EdgeでありながらIEの環境を再現するモードとなっています。

IEモードのサポートも、今のところ2029年まで

ただ、EdgeIEモードも、サポートは2029年までの予定です。その後については明言されていません。前々からIEは終了のアナウンスがされてきましたが、ついにカウントダウンが始まったという状況でしょう。

IEは、なぜ終了することになったのか?

Webの最新機能に対応できない

Microsoftは、Windows10の標準ブラウザであるEdgeのリリース後、IEの開発をストップしています。今のIEは、Webサイトの最新機能に対応できないケースも少なくありません。なお、202011月にリリースされた「Edge87」以降は、YouTubeInstagramTwitterなど、IEと互換性のない一部のサイトにIEでアクセスしようとすると、Edgeにリダイレクトする機能が盛り込まれています。

セキュリティの脆弱性

IEは、古くからのブラウザのため、セキュリティに関しても脆弱性が否めません。セキュリティ更新プログラムは月ごとにパッケージ配信されていましたが、Edgeに関しては、緊急度の高い脆弱性のセキュリティパッチを数時間から数日で配信しています。その点でも、安全性に対する差があると言えるでしょう。

それでもIEが残されてきた理由

ユーザーサイドにもIEに対する不満がありました。特に指摘されていたのは、表示系の弱さです。Webサイトの表示崩れや印刷の体裁崩れが、往々にして発生していました。それでも、IEが残されていたのは、IEでなければ対応できない古いシステムやWebサイトがあるためでした。今やIEの役割は、一般的なWebブラウザとしてではなく、レガシーなシステムやサイトとの互換性を維持するためだけにある、といっても過言ではありません。

IEサポート終了によって生じる問題

置き換えできなかったレガシーなシステムに影響

最近のシステムは、IEサポート終了を織り込み済みで開発されたものがほとんどだと考えられます。そのため、他のブラウザへ移行しても影響は少ないでしょう。しかし、古くから使われていて置き換えのできない基幹システムなどは話が別です。IE以外のブラウザでは対応していない古い言語やActiveXを利用している場合があり、他のブラウザではシステムが使用できなくなる恐れがあります。このほか、表示の体裁が崩れ、UXが著しく低下する可能性も考えられます。そのようなレガシーシステムが多ければ多いほど、影響の範囲は拡大していくでしょう。

2社に1が「基幹システム対応が必要」と回答

では、IEの利用実態はどれほどなのでしょうか? Qbook編集部では、IEサポート終了に伴う対応をアンケート調査(複数回答)しました。

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(「【2021年Qbook調査】Internet Explorerに関する実態調査」より抜粋)

回答のあった228名のうち、社内基幹システムの対応が必要だと回答した方は115名でした。つまり、まだ2名に1名は現在も社内基幹システム利用時にIEを利用しているという結果が出ました。このほか、顧客納品システムへの対応が必要だと答えた方が94名、業務プロセスへの対応は60名と、事業にダイレクトに影響するシステムについても対応が必要な企業が多いことが窺えます。すでにWebブラウザとしては、世界的にも主流ではなくなったIEですが、国内企業のシステムの一部としては、まだまだ健在と言えるでしょう。このアンケート結果は、サポート終了に伴うリスクの高さが表れています。

企業システム側の具体的な影響は未知数

そうなると気になるのは、具体的な影響やその範囲についてです。しかし、残念ながらシステムの規模や構成、利用している環境によって変わってくるため、一概に言えないのが実情です。アンケートでも、IEからの移行を対応中で、スムーズに進んでいないと答えた企業は、その47が「影響を把握しきれていない」を課題に挙げています。まず取り組まなければならないのは、影響・範囲の調査ということになります。

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(「【2021年Qbook調査】Internet Explorerに関する実態調査」より抜粋)

移行のために、まずは調査を

調査は年単位のプロジェクトになる

移行に伴う影響度については、専門の会社に相談し、システムの中身の複雑度を確認して算出することになるでしょう。その調査にどのぐらいかかるのかというと、これもシステムの規模や環境によりますが、基幹システムとなると最低でも数ヶ月というレベルでは収まらないはずです。どう短く見積もっても、年単位での調査のプロジェクトを立てる必要があります。

実際には23年かかる

実例を元に見てみると、調査には23年かかる見込みです。そのあとに、改修を予定していますが、場合によっては部分的な改修よりも、全面リニューアルしたほうが早いという可能性もあるでしょう。それによって、予算やスケジュールも流動的になると考えられます。いずれにしても改修まで含めると、さらに数年のスパンが必要となるでしょう。

特に急ぐべきは、金融業界

2029年までという猶予はあるものの、特に金融業界はスケジュールがかなりタイトになるかもしれません。業界的にレガシーシステムの利用が多く、物量的に調査に時間がかかる傾向にあると考えられます。さらに、改修に関しても、安定性や確実性が求められるため、そのぶん工数が多くなると考えられます。もし、まだ対応に着手していない場合、あるいは影響度合いが不明な場合は、問題を先延ばしにせず速やかに対策を講じるべきでしょう。

IEモードを使い続けることについて

2029年まで、IEモードで事足りるか?

確かに現状のシステムを、EdgeIEモードで使い続けることもできますが、それはあくまで暫定的な処置とすべきでしょう。今はそれほど問題がなかったとしても、IEモードのサポート終了までに新しい技術が次々と生まれ、システム側が対応できず、さらなる弊害が生まれる可能性があるからです。遅かれ早かれIEからの移行には着手しなければなりません。2029年をデッドラインに据えて、システム改修までの移行措置としてEdgeIEモードを活用するのが最善策です。

IEモードの再現性は100%?

両者の違いに関しては、検証事例が少ないため、EdgeIEモードはIEと同じ環境を100%再現できている、と言い切れない部分があります。たとえば、アンケートでも「EdgeClickOnceに対応しているのか、イマイチわからない」といった声が寄せられています。

また、やはり表示系に関しても再現性が懸念されます。IEなら1ページで収まるものが、EdgeIEモードではフォントの間隔やページのスペース領域が微妙に異なり、スクロールバーが発生してしまう、というケースも考えられるためです。あくまでも、ユーザーの環境に依存するため難しいところですが、UXに関わる部分なので、留意すべきでしょう。しかし、暫定的な方法として、EdgeIEモードが有効であるのは間違いありません。

サポート終了外のIEでも、早めの対策を

一方で、Windows ServerWindows8.1など一部のOSでは、IEのサポートが継続されます。しかし、サポートが継続されるとはいえ、これらのOSでもIEを使い続けるのは、あまりオススメできません。今はIEを使えても、OSのサポート終了で同じ問題が発するからです。IEは、その役割を終えようとしているブラウザです。今後も進化を続けるWeb技術に対して、対応するアップデートもありません。それによって、新たな弊害が発生する可能性もあります。問題を先延ばしにせず対策を始め、もしどこから着手すべきかわからない場合は、専門の調査会社や各ベンダーとコンタクトをとり、調査から始めることをおすすめします。

IEサポート終了のリスクは、潜在化している可能性

複合しているシステムは、調査の進め方も検討を

一般に、企業で使われているシステムは、さまざまなベンダーのシステムを複合的に利用しているケースがほとんどです。それぞれのシステムで検証する必要があるため、調査には時間がかかるものです。調査のプロジェクトも、大元で音頭をとって一気に進めるのか、それとも各ベンダーごとに実施するのかで、進め方やスケジュール感が変わってきます。まずはリスクを洗い出すところから始めるのが良いでしょう。

まだわからないインパクトの大きさ

IEのサポート終了に対して、世の中的には危機感が薄い印象がありますが、それは問題がまだ明確になっていないためだと考えられます。かつて騒がれた「2000年問題」は、影響が目に見えていたため、大きな問題となって取り上げられました。今回のIEサポート終了も、調査が進むにつれて影響が明らかになり、インパクトの大きい問題になっていく可能性があります。

スマートフォンやタブレット端末が普及しているとはいえ、アンケート結果を見るとまだまだIEに依存している状況がわかります。潜在化しているリスクが、企業や事業に大きなダメージをもたらさないとも限りません。

なお、今回引用したIEサポート終了に関するアンケート調査結果は、以下よりダウンロードいただけます。現状を把握するための参考資料として、ご活用いただければ幸いです。

資料ダウンロード

調査目的
Internet Explorerのサポート終了を2022年6月に控え、各社の認識や準備状況等について知見を得るため
調査方法
「Qbook」内のWebアンケート
調査対象
ソフトウェアやアプリをはじめとする開発業務・品質保証業務に携わる方、またはそれらの事業を展開する企業に所属されている方
有効回答数
241名
調査期間
2021年7月30日~2021年8月31日
DL URL
https://www.qbook.jp/download/20210928_1242.html

執筆者:Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。