オンプレミスに回帰の傾向あり?クラウドとオンプレミスの特徴と違いを改めて解説

最終更新日時:2022.12.19 (公開日:2022.12.19)
オンプレミスに回帰の傾向あり?クラウドとオンプレミスの特徴と違いを改めて解説

企業のITシステムは、以前は自社内にハードウェアを設置して運用管理するものでした。最近この方式システムをあえて「オンプレミス」(on-premise)と呼ぶのは、「クラウド」(Cloud)の普及が進み、対比されるようになったからです。そこで今回は、オンプレミスとクラウドのメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。

もくじ
  1. クラウド"だけ"はもう古い?オンプレミスとクラウドの特徴
  2. オンプレミスでの開発環境
  3. クラウドでの開発環境
  4. 「ハイブリッドクラウド」が活用される時代へ
  5. まとめ

1.クラウド"だけ"はもう古い?オンプレミスとクラウドの特徴

企業のITシステムは、長らく自社で管理できる施設内にハードウェアを保有し、自ら運用管理するものでした。

現在では、このスタイルのシステムを「オンプレミス」(on-premise)と呼びます。
premiseという単語には「構内」などの意味がありますので、on-premiseとは自社で保有したシステム、あるいはデータセンター内のスペースを借りそこに自社機器を設置・運用する方式を表します。

従来は普遍的な運用方式だったものがわざわざ「オンプレミス」という名前で呼ばれるようになったのは、このシステム運用と異なるスタイルであるクラウドコンピューティングが普及してきたからです。
実際、Googleで「オンプレミス」がコンスタントに検索されるようになったのは、2009年以降のことです。

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Googleトレンドによれば、継続的に「オンプレミス」が検索され始めたのは2009年6月頃から

「クラウドコンピューティング(以下、クラウド)」とは、コンピュート(計算)、ストレージ、ネットワークといったコンピューターリソースを、インターネット経由で提供するサービスのことです。

クラウドサービスの本格的な提供が始まったのは21世紀初頭からであり、現在ではAmazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platformの3大クラウドプラットフォームを始めとした、さまざまなクラウドサービスが存在しています。

クラウドコンピューティングは提供されるサービスの形式によって、SaaS、PaaS、IaaSというように分類されることがあります。

クラウドコンピューティングのサービス形式

① SaaS(Software as a Service)

SaaS(Software as a Service)は、電子メールやグループウェアなどのアプリケーションをインターネット経由で提供するものです。代表的なものとして営業支援ツールのSalesforceや、開発者界隈で大人気のSlackなどが挙げられます。

② PaaS(Platform as a Service)

PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション実行用のプラットフォームをインターネット経由で提供するものです。代表的なものとして、Google App Engine(GAE)や、クラウドプロバイダーが提供するマネージドデータベースなどが挙げられます。

③ IaaS(Infrastructure as a Service)

IaaS(Infrastructure as a Service)は、いわゆる仮想マシンをインターネット経由で提供するものです。オンプレミスと対比して「クラウド」と言った場合、このIaaSをイメージされる方が多いでしょう。またInfrastructureの替わりにHardwareを当ててHaaSと呼ばれることもあります。代表的なものとして、Amazon EC2、Google Cloud、Azure IaaSなどが挙げられます。

オンプレミスとクラウドにはそれぞれメリット/デメリットがあります。例えばクラウドがより新しい仕組みだからと言って、ITシステムのすべてをクラウド化するのは、必ずしも最適解とは限りません。それでは両者の特徴を比べてみましょう。

オンプレミスのメリット・デメリット

前述のとおり、オンプレミスは自社でハードウェアを保有し、すべての運用・管理を自前で行います。

オンプレミスの長所

この方式のメリットとして、まずは自社の経営にマッチするようにいくらでもカスタマイズが効く点が挙げられます。クラウドプロバイダーはさまざまなサービスを提供していますが、それらのサービスではカバーしきれない業務もあります。

また、すでにオンプレミスで構築され長期間運用されているシステムを所有している場合は、システム間の連携を取りやすいこともメリットです。
既存のオンプレミスのシステムは、クラウドなど外部との連携を考慮されていない場合もあるからです。

さらにセキュリティのレベルを高く保ちやすいこともオンプレミスのメリットです。
例えば極めて秘匿性の高いデータを扱う場合なら、インターネットと接続しない、独立したネットワーク内で完結させたクローズドなシステムもありえます。
もっとも、昨今ではリモートワークの普及などで、インターネット経由のアクセスを一切認めないというのも運用や働き方の点で不便と考える場合もあるかもしれません。

オンプレミスの注意点

一方、オンプレミスのデメリットですが、最初に挙げられるのはシステム構築や専任人員配置などに要する初期費用の高さでしょう。
ITシステムのハードウェアは、数年間利用することを考慮しストレージやCPU処理能力の冗長性を確保するためにキャパシティに余裕を持たせた構成にすることが多いのでなおさらです。

また、導入後の運用コストについて、オンプレミスのシステム運用を行う機材と人員について考慮しなければなりません。
これは自社内の既存部門の人員に任せることで安くなる場合もあれば、新たに専任の部署と人員を配置した場合はそのコスト負担はシステムの運用期間全般にわたって要することになります。

さらに、導入したシステム機材などはハードウェアを発注してから届くまでのタイムラグ、調達後の構築のコスト、そして事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)などのコストを考慮する必要があります。また、システムの運用終了後、機材が旧式化、あるいは特定用途の専用システムゆえに転用や再利用が難しく、いわば「不要な固定資産」化してしまうことがあります。

クラウドのメリット・デメリット

クラウドの場合、コンピューターリソースはプロバイダーが提供するものをインターネット経由で利用します。
そのため、カスタマイズはプロバイダーが提供する範囲に限られます。ファッション用語で例えれば、クラウドはプレタポルテ、オンプレミスはオートクチュールと言えます。

クラウドの長所

一般的なクラウドサービスは、ネット経由で指示を出したら短時間で(数分程度)利用可能になります。必要な時に直ちに利用できる点は、クラウドの大きな利点と言えるでしょう。

セキュリティに関しては、各クラウドプロバイダーも威信をかけて強化しており、「クラウドだから特に危険」ということはありません。
プロバイダーの奨めるやり方に沿うことで、一定レベルのセキュリティを維持できます。

コストは、クラウドでは新たにハードウェアを購入する必要がないため、初期費用はオンプレミスと比較して低く抑えられる傾向にあります。
クラウドの場合、コンピューターリソースを使用した分だけコストが発生しますので、終了したサービスはそのまま削除するだけで余計なコストは発生しません。

クラウドのサービスの中でもAmazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platformの3大クラウドプラットフォームなどは、世界規模で地理的に離れた場所に位置する複数のデータセンターを利用しているため、災害時にもデータは保護され、サービスを止めることなく利用可能です。バックアップ等も設定により自動に行えます。

クラウドのユーザーは、オンプレミス運用であれば自社で行うことになるハードウェア/ソフトウェア両方のシステム管理から解放され、システムの利用に集中できます。
この点はクラウドの大きな利点と言えます。

クラウドの注意点

クラウドの注意点について、一般的にクラウドはオンプレミスほどカスタマイズ性が高くないことが挙げられます

さらに、クラウドサービスの提供元企業で情報漏洩などセキュリティに関わる事件・事故が発生した場合、自社の顧客データなど重要なデータの流出などに巻き込まれてしまうリスクが発生する可能性があります。

また、クラウドとの連携を考慮せずに設計されているオンプレミスの既存システムとの連携を行うためには、クラウドと既存システムの両方に精通した開発者が必要になりますし、その場合は対応作業分のコストも嵩みます。

そしてクラウドは前述の通り初期導入コストは低く抑えられる傾向にありますが、一方で、システム運用時にどのリソースをどれくらい消費するか、リソースごとにどのように費用が発生するのか、両者を把握しておかないと、トータルでの運用コストが事前の想定を超えることもあり注意が必要です。

2.オンプレミスでの開発環境

次に、開発環境として見た場合のオンプレミスの特徴を見てみましょう。

これはクラウドが普及している現在でも、従来あるオンプレミスの運用環境の整備と内容的には変わらず、従来と同様に初期費用が嵩む点や運用・管理を行う担当者が必要です。
また開発用途の場合、環境の構築も時間と手間がかかります。
さらに、物理的なコンピューターを設置するための場所の確保にも費用がかかります(地価の高いエリアでは深刻な問題です)。

一方で、オンプレミスの場合は環境のカスタマイズ性が高く、用途に合わせたチューニングが可能になります。
またセキュリティに関しても、インターネットと切り離した運用にすることで不正アクセスやデータ漏洩などの面で、特に高いセキュリティレベルを実現できます。

このようなメリットがあるとは言え、前述のさまざまなコストの課題があり、開発環境として純然たるオンプレミスを利用する企業は減ってきているようです。

3.クラウドでの開発環境

では開発環境としてのクラウドはどうでしょう? こちらも一般的なクラウドと大きな差異はありません。
すなわち、初期費用を低く抑えられ、必要になったら直ちに環境を用意できるというメリットがあります。特に開発用途ですと、クラウドプロバイダーが必要なアプリケーションやライブラリをあらかじめ用意してくれていることが多く、あらためて開発環境の構築をする必要もありません。

すぐに始められて、利用後はすぐに終わらせられるというクラウドの特徴は、新しいことを始めるのにも適しています。
最小限の規模で試験的に始めてみて、うまくいきそうであれば規模を拡大し、あまり見込みがなければさっそく店じまいできるからです。

この特徴は、昨今の主流となりつつある開発手法のアジャイルとも相性が良いのです。

4.「ハイブリッドクラウド」が活用される時代へ

前述の事情から、開発環境にクラウドを用いる例が増えています。
その一方で、本番環境のアプリケーションは従来と同様オンプレミスで運用する場合もあるようです。

システムの用途によっては高いセキュリティや、カスタマイズが必要な場合もあり、その場合はオンプレミスでということなのでしょう。

このようにクラウドとオンプレミスを組み合わせて利用することで、両方の仕組みの利点を享受する「ハイブリッドクラウド」が注目されています。

さらにこの記事では触れていませんが、クラウドプロバイダーと同じ仕組みのハードウェアを自社内に設置する「プライベートクラウド」を組み合わせる場合もあります。

オンプレミスはクラウドによって置き換えわるのではなく、ハイブリッドクラウドとして併存していくものなのかもしれません。

まとめ

対照的なものとして語られるオンプレミスとクラウドには、それぞれメリットとデメリットがあります。

今後は両者の良いところ取りとも言えるハイブリッドクラウドの利用が増えていくでしょう。

執筆者:飯岡 真志

ライター

フリーランスライター&エディター。アスキー(アスキー・メディアワークス)で技術系雑誌の編集に携わり、2013年以降はフリーランス。