ソフトウェア開発において、品質を保証するためにテストは欠かせません。しかし、手作業によるテストでは多くの労力や時間が必要です。そこで、テスト工程の効率化を支える仕組みとして活用されるのが「テストスクリプト」です。
本稿では、テストスクリプトの基本から作成時のポイント、おすすめのツールまでお伝えします。効率的にテストを進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1. テストスクリプトとは
テストスクリプトとは、ソフトウェアをテストするために実行すべき一連の命令や手順を記述したものです。コンピューター上で実行されるテストコードを指す場合もあれば、テスト担当者が操作する手順をまとめた文書を指す場合もあります。
いずれの場合も、テストスクリプトはテストを効率的かつ正確に実行するために役立ちます。まずは、混同されやすい「テストケース」や「スクリプト型テスト」との違いについて整理しましょう。
1-1. テストケースとの違い
「テストケース」とは、実行するテストの内容を定義した文書や項目のことです。ソフトウェアの品質を保証するために十分な数のテストケースを作成し、それぞれにテストの条件や手順、期待値などを定義します。
テスト担当者が手動でテストする際には、このテストケースを参照することが一般的です。そのため、テストケースは広い意味で、手動テストにおけるテストスクリプトともいえるでしょう。
ただし、一般的にテストスクリプトという場合、コンピューターに自動で実行させるテストコードを指すことが多いです。以降の章では、自動テストにおけるテストスクリプトに焦点を当てて解説します。
1-2. スクリプト型テストとの違い
「スクリプト型テスト」とは、あらかじめ定義された手順を参照しながら操作するテスト手法です。テスト担当者がテストケースに沿って操作する手動テストも、コンピューターがテストコードに沿って実行する自動テストも、スクリプト型テストに含まれます。
つまり、「事前に定義されたテストスクリプトを使う」という点がスクリプト型テストの本質です。テストスクリプトは「手順そのもの」、スクリプト型テストは「その手順を活用した手法」と捉えれば、違いが分かりやすいでしょう。
なお、スクリプト型テストを含めたテストの主な種類について詳しくは、次の記事を参考にしてください。
2. テストスクリプトの書き方・作り方
テスト自動化におけるテストスクリプトを作成する方法は2種類に大別されます。それぞれの概要やメリット・デメリットについて、見ていきましょう。
2-1. スクリプトを手動で記述する
1つは、プログラミング言語やテストフレームワークを使い、手動でコードを記述する方法です。テスト対象の操作や入力データの送信、出力データの検証など、個々の処理をコードとして記述していきます。
たとえば、「Python」のようなプログラミング言語を利用すると、画面のボタンをクリックしたり、文字を入力したりする操作をコードで表現可能です。複雑なテストでも柔軟に自動化できる反面、プログラミングの専門知識と多くの労力が求められます。
なお、Webアプリの操作を自動化する際には、画面上の要素を特定するために「XPath」という言語がよく用いられます。XPathの基本については、次の記事を参考にしてください。
2-2. スクリプトをツールで自動生成する
もう1つは、専用のテスト自動化ツールを使ってスクリプトを自動生成する方法です。操作を記録してスクリプトに変換するものや、日本語で書かれたテストケースをそのままスクリプトに変換するものなど、仕組みはツールによって異なります。
この方法の大きな利点は、専門的なプログラミング知識がなくても、効率よくスクリプトを作成できることです。多くのツールには前述のXPathを効率的に取得・処理する機能が備わっており、手動よりも正確かつ効率的に扱えます。一方で、ツールによってメンテナンス性や使いやすさには差があり、スクリプトが複雑になると修正や管理が難しくなるケースもあります。
3. テストスクリプトを作成する際のポイント
テストスクリプトはテスト効率を高める手段として有効ですが、作り方を誤ると逆に負担が増えるケースもあります。ここで紹介する、テストスクリプトを作成する際の3ポイントを押さえておきましょう。
3-1. ツールやフレームワークを有効活用する
現在では多くのテスト自動化ツールやテストフレームワークが提供されています。テストスクリプトを作成する際には、用途や目的に合ったものを有効活用しましょう。何も使わずにコードを記述するのは非効率的で、作業負荷や人的ミスの増加につながります。
適切なツールやフレームワークを活用すれば、コードの記述量を減らせるだけでなく、テスト自動化のハードルを下げることも可能です。その結果、チーム全体で効率よくテストに取り組めるようになり、テスト工程の精度向上も期待できます。
3-2. 継続的にメンテナンスすることを考慮する
テストスクリプトは、継続的にメンテナンスすることを考慮しましょう。ソフトウェアの更新に合わせて、スクリプトも定期的に見直さなければなりません。
たとえば、画面要素の位置や構成、順序が変わった場合、以前のスクリプトでは正しく動作しないことがあります。効率的な自動テストを維持するためには、こうした変更に対応できるよう、メンテナンスを前提にスクリプトを設計することが大切です。
ツールやフレームワークを活用する場合は、メンテナンス性を事前に確認しましょう。スクリプトの更新を少ない手間で行える製品やサービスを選ぶと、メンテナンスの負荷を抑えて安定運用が可能です。
3-3. トレーサビリティを確保する
テストスクリプトは「トレーサビリティ(追跡可能性)」を確保することが大切です。トレーサビリティとは、関連する文書や情報をたどれるように紐づけることを指します。
具体的には、どのテストスクリプトがどのテストケースや要件に対応しているかを明確に紐づけておきましょう。この紐づけを行うことで、テスト中や運用時に問題が発生した場合でも、原因を迅速に特定できます。
テストスクリプトのトレーサビリティを確保することは、テストの抜け漏れを防ぎ、全体の品質向上にもつながります。チームでテストを運用する際には、この関連付けを常に意識することが重要です。
4. テストスクリプト作成に役立つ代表的なツール・フレームワーク
テストスクリプトの作成に役立つツールやフレームワークは多岐にわたります。ここでは、代表的なサービスとして「T-DASH」と「Selenium」を紹介します。
4-1. T-DASH
「T-DASH」は、バルテス株式会社が提供するテスト自動化ツールです。日本語で書かれたテストケースから、自動テスト用のスクリプトを生成できます。プログラミングの専門知識が求められないため、テスト自動化のハードルを大きく下げられるのが特長です。
月額4,840円(税込)~と低コストで、インストール後すぐに使い始められます。「テストコードの実装に適した人材がいない」「コストを抑えて自動テストを取り入れたい」といった場合は、ぜひT-DASHをご活用ください。
4-2. Selenium
「Selenium」は、Webアプリケーション向けのテストフレームワークです。ブラウザ操作を効率よくコードに落とし込める機能が豊富で、「Python」や「Java」など多数のプログラミング言語に対応しています。複雑なテストも柔軟に自動化できるのが特長です。
コードの記述にはプログラミングの専門知識が必要ですが、無料で利用できるため広く普及しています。「Webアプリケーションを開発している」「テストコードの実装に適した人材がいる」といった場合は、Seleniumの活用がおすすめです。
5. まとめ
テストスクリプトとは、ソフトウェアをテストするために実行すべき一連の命令や手順をまとめたものです。自動テストの実現に欠かせないもので、テストの効率や精度の向上に役立ちます。ただし、手動でコードを作成する場合はプログラミングの専門知識が必要です。
テストスクリプトを効率的に作成するためには、T-DASHのようなツールやSeleniumのようなフレームワークを活用しましょう。テストスクリプトを実務に取り入れる際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。



