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マネジメント 2024.02.07
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「QMO」とは?PMOとの違いと必要なスキル・役割・導入する5つの効果を解説

監修: 小島 友美

バルテス・ホールディングス株式会社 R&C部 上席研究員

「QMO」とは?PMOとの違いと必要なスキル・役割・導入する5つの効果を解説

近年、品質への関心の高まりとともに、注目を集めてきた「QMO(Quality Management Office)」。どういったものなのか分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、同時に取り上げられることが多い「PMO(Project Management Office)」や「QA(Quality Assurance)」との違いと、あらゆる「品質」を向上させるために欠かせないQMOの意味、役割等についてまとめました。

もくじ
  1. 品質のカギを握る「QMO」とは何か?
  2. 「QMO」の役割・スキル
  3. 「QMO」を導入すると得られる5つの効果
  4. まとめ

1.品質のカギを握る「QMO」とは何か?

「QMO」は「Quality Management Office」の略語

「QMO」は「Quality Management Office」の略語です。
「組織的な品質管理活動」や「品質管理組織活動」
などと訳されていることが多いようです。品質管理に特化した役割を担う組織または事業、活動のことを指しています。

一部では「Quality Management Officer」と表記され、品質管理を行う責任者・役職としても「QMO」が使われています。場面によっては文脈で組織・活動か役割かを読み分ける必要がありますが、基本は前者の意味で用いられることが多いです。

QMOは、プロダクトのクオリティや顧客満足度、業務効率などあらゆる「品質」を向上させるために、組織の構築から人材育成まで、多種多様な施策を組織的に実施します。その目は労務環境や安全、環境にまで及ぶこともあり、組織内に国際規格に準拠した品質マネジメントシステムを構築することもあります。

ソフトウェア開発においては、QMOが品質保証計画をたてたり、品質監査を実施したりして、品質における様々な課題を見える化し、組織的に改善に役立てるなどして、品質向上のために活躍します。

また、QMOはソフトウェア開発だけでなく、製造業や医療の現場でも用いられているようです。

製造業では、QMOは品質管理の仕組みを構築して、改善を進めることで、製品の品質に加えて、不良品の発生率を下げたり、カスタマーサポートの質を向上させて顧客満足度を向上させたりしています。医療機関におけるQMOはなによりも安全が品質となるので、感染症を予防したり事故防止に効果がある施策を取り入れたりしています。

冒頭で、「Office」「Officer」の違いを述べましたが、双方に共通しているのは、QMOは品質管理、安全の専門部署あるいは専門家として会社や組織、プロジェクトをリードする存在だということです。品質管理の知識、スキルだけでなく、高いコミュニケーション能力や強いリーダーシップが必要とされるポジションになります。今後、品質重視の傾向が強まると予測されていることから、さらに幅広い業種に広まっていくと考えられています。

「QMO」が重視されてきた理由

QMOは、主にソフトウェア開発や製造業において重視されるようになりました。これは生産効率、開発スピードの向上に比例してトラブル、事故、品質低下に対応する必要性が増したからです。
品質低下はリリース後に不具合やクレームをもたらし、顧客満足の低下に直結するため、事業・プロジェクトの成功に大きな影を落としてしまいます。全社で品質管理活動を推進することが、事業やプロダクト全体の成功と成長をもたらすという認識の広まりとともに、QMOが重視されるようになったのです。

ソフトウェア開発分野においては、新しい様々な開発手法が登場するなどして、開発環境の変化が激しくなってきたこともあり、品質に関するナレッジを組織で一元管理して品質水準を保つ役割も果たす「QMO」が早くから注目されてきました。

「QMO」と「PMO」の違いは?

「PMO」は「Project Management Office」の略語です。端的にいえば「プロジェクトマネジメントをする組織」です。プロジェクトマネジメントとは、定められた期間でプロジェクトや事業の成果を最大化するために、様々な施策の計画・実行・管理・評価(PDCA)をくり返し、目標を達成することです。これを組織的に行うのがPMOになります。

QMOとPMOの違いは、簡単にいえば、PMOがプロジェクトマネジメント、すなわち全体の管理を行うのに対して、QMOはプロジェクトの「品質」にフォーカスしているということです。

両者には共通点もあります。とくに、組織の効率的運営や品質確保に関する部分です。両者はプロジェクトの目標や要件に合わせて、組織管理と品質の面から成功に向けて協調する必要があります。しかし、プロジェクトの目標・目的や規模によって関わり方が異なるため、プロジェクト単位で相互に無駄な干渉が発生しないよう、入念な事前検討・設計が重要とされています。

「QMO」と「QA」の違いは?

「QA」は「Quality Assurance」の略語で「品質保証」を指します。QAはプロダクトが要件や顧客のニーズ、規格に応えるものであるかを確認する活動のことです。要件定義、設計、製造といった工程ごとに、品質要求に適合できているかをテスト・検証し、不適合があればそれを指摘して修正を求めるのが主な役割です。成果物の品質だけなく、プロセスの質についても責任を持っています。

QMOとQAは密接な関係があります。どちらも品質をより良いものにして、顧客満足度を向上させ、プロセスの改善を行う点で目的は共通しています。異なるのは、その視点とスタンスです。QMOは組織全体の品質を考慮し、ときには労務環境や安全、環境も配慮した「品質」を管理し、QAは基本的にプロダクトや製品、サービスに特化した品質保証を行う点で違いがあります。

2.「QMO」の役割・スキル

「QMO」の役割

QMO(Quality Management Office)の役割は、品質管理に関わる戦略・計画を策定して、品質改善のためのプロセスや手順を設計し、必要であれば新たな手法等を導入してプロジェクト成果物の品質を最大限に高めることです。

成果物が最終的に要件や顧客のニーズに応え、様々な規制に準拠しているかを確認することも重要な役割です。また、品質に関する教育を行って、組織の品質文化を進化させることも目指します。

「QMO」に必要とされるスキル

冒頭でQMOは「組織的な品質管理活動」であり、一部で「Officer」として役職として認知されているとお伝えしました。組織と役割とでは若干ニュアンスが異なりますが、QMOは組織全体の品質を考え、品質を向上させる重要な役割を持っています。

そのため比較的高いスキルが必要だといわれています。具体的には、以下のようなスキルが挙げられることが多いようです。

  • 品質保証(QA)、品質管理に関する知識と豊富な経験
  • プロジェクトマネジメントに関する知識
  • リスクマネジメントの知識と経験
  • 課題分析、問題解決能力
  • 交渉の場や組織・チーム内でのコミュニケーション力

3.「QMO」を導入すると得られる5つの効果

QMO(Quality Management Office)を導入することで、組織が得られる主なメリット・効果をまとめます。

① 品質管理の改善と品質の向上

QMOには品質管理の経験が豊富なメンバーが集うことになります。これにより、組織の品質管理環境の改善を推し進めることができるようになり、これが個々のプロダクトや製品の品質に反映され、品質の向上が期待できます。プロセスが改善されることで従業員の負担が軽減されるメリットも見逃せないでしょう。

② 品質管理プロセスの標準化

QMOが品質管理環境を改善することで、これを標準化し、国際規格に準拠した品質マネジメントシステムの導入も容易になります。
外部からの監査や認証に耐える組織作りができることも期待できます。

③ 品質に関する情報の収集と解析

組織的に品質に関する情報を収集し、分析することができるようになります。これにより、品質改善のための課題発見が早期化できるだけでなく、主にセキュリティ問題への早期対応を可能にしたり、リスクを事前回避できたりする可能性を高めることができます。

④ 「品質文化」の醸成と発展

組織的な品質向上活動をすることで、組織内に品質文化が生まれます。
全体に品質意識が広まり、目的意識の共有やモチベーションの向上にも繋がり、組織の発展に繋がります。

⑤ 問題対応に関わるコストの削減・低減

品質管理の改善を徹底すると、ほとんどの場合、品質に関する諸問題は解決に向かい、開発プロセスの効率が良くなり、より洗練されたものになります。
製品・サービスのリコール対応やクレーム処理といった問題対応に関するコストが削減されるだけでなく、工程の効率化により、開発コストの無駄が低減できます。

まとめ

「QMO」とは「Quality Management Office」の略語です。
「組織的な品質管理活動」や「品質管理組織活動」などと訳され、主に品質管理に特化した役割を担う組織(または事業、活動)のことを指します。

QMOが品質管理に取り組むことでプロジェクトの品質が上がり、そのナレッジを全組織で共有することで組織的な向上を図ることができます。これは、組織全体から見ても業務効率化に直結する働きとなるでしょう。

また、QMOを導入することで、PMやPMO、開発者は本来の業務に集中できるようになり、組織全体として生産性が向上したり、モチベーションが上がったりするといった効果があることも見逃せません。QMOは様々なプロジェクトの成功に大きく貢献できる可能性があるといるでしょう。

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監修: 小島 友美

バルテス・ホールディングス株式会社 R&C部 上席研究員

入力/出力系システム、ファイル管理システムのシステムエンジニア、品質管理の専門職(ソフトウェア品質管理、ソフトウェア品質保証)、リーン・シックスシグマ講師を経て、現職。担当業務は、社内外のテスト関連教育セミナーの講師とコンテンツ制作を担当する。