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ITニュース・ITトレンド 2024.01.18
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「インターネットトラフィックの15%が猫関連」ってホント?デジタル世界では、なぜ「猫」の人気が高いのか

執筆: 大木 晴一郎

ライター

「インターネットトラフィックの15%が猫関連」ってホント?デジタル世界では、なぜ「猫」の人気が高いのか

インターネットの世界では猫が大人気です。「ネタに困ったら猫を出せ!」といわれるほどで、事実、ネットには猫の写真・動画をはじめ、猫の話題がとても多く感じます。ランキング等を見ても、多くの人々のアクセスが集まっていることがあります。そこで、猫の人気ぶりやライバル(!?)の犬などの話題を集めました。

もくじ
  1. 「インターネットトラフィックの15%が猫関連」って本当!?
  2. なぜ、こんなに「猫」が人気なのか?
  3. 「猫」の"ライバル"たち
  4. まとめ:猫たちと楽しく暮らしたい

1.「インターネットトラフィックの15%が猫関連」って本当!?

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フリスキーが2013年に発表した説

ご存じのように、猫に関連したコンテンツの人気はとても高く、インターネット界隈には「猫のコンテンツを出せばウケる」という感覚があるようです。

実際、猫動画や写真を公開しているYouTubeやInstagramアカウントのフォロワー数がとても多かったり、動画や画像に数多くの「いいね!」がついたりしてバズっている状況を目にした人も多いのではないでしょうか?

これに関連して、先に真偽不明だとお伝えしておきますが、2013年頃、ペットフードブランドの「フリスキー(Friskies)」が「インターネットトラフィックの15%が猫に関するものだ」という"説"を発表したという話が流布しました。

15%という数字は途方もなく大きいですが、上のようによく猫コンテンツがバズっているのを目にしている人々からは実感を伴って信じられる"説"で、好意的に広まっています。

調べてみると、この件は2015年8月にニューヨーク・タイムズの記事で「説得力のある都市伝説」として紹介されていました。記事タイトルは直訳すると「猫はどうやってインターネットを乗っ取ったか」ですから、真偽はともあれ、ネットの猫人気が世界的にすごいことが伝わってくる内容です。

どうやら、15%という数字はフリスキーが独自に行った調査に基づく主張と思われますが、現在では、そのソースは明らかにされていないようです。さらに調べると、この主張の源流はフリスキーが2012年に開催した「The Friskies」というインターネットの猫に関する動画コンテストのプロモーション......つまり宣伝の一環だった可能性が高そうだと分かりましたが、確証は得られませんでした。

もしかすると、この説はコンテストのキャッチコピー等の一部だったのかもしれません。しかし、それを事実と思わせ、広めてしまうほど、ネットでの猫人気を実感している人々が多かったのだと思います。

パソコン通信時代から猫は人気

21世紀に入り、TwitterといったSNSの企業公式アカウントに猫が登場する機会が増えています。これは写真や動画の投稿が楽になったことも影響しているでしょう。

最近ではカシオ計算機株式会社(CASIO)の公式Twitterアカウント(@CASIOJapan)に登場する猫「カシ子ちゃん」や工事現場の猫「現場猫」など人気のスター猫も数多く現れ、インターネットでは猫の話題に事欠きません。これも猫人気を示している事象だといえます。

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インターネットの普及がはじまったのは1990年代中盤以降ですが、それ以前は"ネット"といえば「パソコン通信」を使って情報のやり取りをするのが主でした。この頃に流行ったのが「顔文字(フェイスマーク)」です。のちにアスキーアート(AA)と一般に呼ばれるようになりますが、当時は等幅フォントが使われることがほとんどで、文字の「全角」「半角」の大きさを意識して作られていました。もっとも有名なフェイスマークは「 (^^) 」ではないでしょうか。

欧米でもフェイスマークは、タイプライターでも表現可能なことから古くから存在しています。日本とは違い横向きで「 :-) )とします。一説によると日本式の横向きのフェイスマークは1986年に誕生したといわれています。

前置きが長くなりましたが、このパソコン通信時代から、猫のフェイスマークは人気があり、一部のユーザーの間でコミュニケーションにも取り入れられていました。例えば、以下のようなものがあります。

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猫のフェイスマークの例(MSゴシック=等幅フォントによるもの)

その後、2000年頃を境にインターネット掲示板全盛期となります。有名な巨大掲示板「2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)」では猫のフェイスマークがアスキーアートへと変化していき、「四大キャラ」という存在が現れました。「四大キャラ」とは、「モナー」「しぃ」「モララー」「ギコ猫」ですが、この4つのキャラクターは全て猫がモチーフでした。ネットの猫人気をある意味、象徴しているような気がします。

英語圏では2005年頃から、「2ちゃんねる」の海外版ともいえる「4chan(4ちゃん/4チャン)」で広まった猫の表現形式「lolcat」がインターネットミームの一つとして一気に広まり、定着しました。「lolcat」は「4chan」で画像投稿が可能なことから生まれた、猫の画像(子猫のことが多い)に幼児語や正しくない英語でコメントを入れた表現です。ユーモラスな記述をされることが多く、莫大な量の「lolcat」がネットを飛び交っています。

なお、「lolcat」はLinuxターミナルの出力を虹色(rainbow coloring)するコマンドとしても知られています。

猫を表すネットスラングが一般化

フェイスマークやアスキーアート以外にも、ネットでは、猫を「ねこ」と素直に表現しないで「ぬこ」と表記してインターネットスラング的に用いることも増えました。

起源は諸説ありますが、「ぬこ」で一般に通じるくらいに認知はされているようです。ネットの国語辞典等への掲載も進んでいます。しかし、一部ではあまりこういった表現を好まない人々もいるようですので使用に際しては少々注意が必要と思います。

他にも「ねっこ」をはじめ様々な言い方があるようです。その場のノリで生まれるものといっても過言ではないので、相当数のネットスラングが存在すると思われます。英語圏でも「Catto」「Cate」「Neko(日本語由来)」など、様々な表現が流布しています。英語では子猫は「kitten」「kitty」で、他の同様に言葉が変わる言語圏では、もともと言い換える下地があったからバリエーションが増えやすかったという見方をしている人もいるそうです。

「ネコノミクス」も話題に

すこしインターネットからは離れますが、世界の愛猫家の消費行動が巨大な経済効果を生み出していることも分かっています。日本では、なんと2022年には2兆円規模の経済効果を生み出していたと理論経済学で著名な大阪府立大・関西大両名誉教授の宮本勝浩氏が算出しており、これを「ネコノミクス」としています。

ちなみに宮本氏は2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本国内の経済効果を654億円と見積もっています。期間の違いがあるとはいえ、猫に小判ではありませんが、ネコノミクスの巨大さが分かります。猫人気はインターネットだけのものではありません。

2.なぜ、こんなに「猫」が人気なのか?

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なぜ、こんなに猫は人気があるのでしょうか? 様々な説があり、いろいろな考え方がありますが、現時点では定説はないようです。イギリスの伝説的な登山家ジョージ・マロリーはなぜ山に登るのかと問われて「なぜ、山に登るのか。そこに、山があるからだ」と答えたといわれますが、猫好きな人も「なぜ、猫が好きなのか。そこに、猫がいるからだ」と答えるかもしれません。

とくにインターネットで猫が好まれた理由として、SFやマンガ作品との関連を考える人も多いようです。初期のインターネット(パソコン通信を含む)普及期に活躍した人物にはSF、マンガ、アニメ、キャラクター好きが多く、彼らに影響を与えたと思われる作品やキャラクターに猫がよく描かれているからです。

アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの名作『夏への扉』(1956年)には、ピートという猫が登場し、重要な役割を果たすことから同作は「猫SF」としてもよく知られています。エドガー・アラン・ポーの恐怖小説『黒猫』(1843年)は、ちょうどコンピュータ・インターネット黎明期の時代に何度も映画化、ドラマ化されていました。

日本に目を移すと、マンガでは藤子不二雄の猫型ロボットが活躍する『ドラえもん(1969年~)』、大島弓子の代表作である子猫の「チビ猫」が活躍する『綿の国星』(1978年~1987年)などが猫作品の定番といえるかもしれません。

忘れてはいけないのは猫の世界的なスーパースター「ハローキティ(Hello Kitty)」(サンリオ・1975年~)でしょう。キティ・ホワイトは、1983年にアメリカのユニセフ子供大使を務めたのを皮切りに様々な大使、使節となるほど国際的に人気があります。

「ネコノミクス」と呼ばれるほどの経済圏を築き上げるほど人気の猫ですが、人気の理由はまだ明確に解明されていないようです。「そこに、猫がいるから」でよいような気もします。

3.「猫」の"ライバル"たち

やはり「犬」が「猫」の最大のライバル?

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ネットで人気なのは猫だけではありません。ライバルという言い方が適切かどうか分かりませんが、犬も大人気です。猫のように、犬によってインターネットトラフィックが奪われているという説は見られませんが、InstagramなどのSNSやYoutubeには数多くの犬に関するアカウントがあり、人気を集めています。

犬に関するインターネットスラングとしては、犬は「イッヌ」「Doggo(ドゴー)」有名ですが、これらも猫と同じく膨大なパターンが存在しています。

企業キャラクターとして有名だったのが検索エンジン・ポータルサイトの「Lycos(ライコス)」の「ライコス犬」です。同ブランドのマスコットキャラクターを務めた黒いラブラドール・レトリーバーで人気がありました。

日本では「かぼすちゃん」という殺処分を逃れ幸せになった柴犬がブログで人気となり、2010年頃から「Doge」というインターネットミームの"元ネタ"になっています。これは上で紹介した「lolcat」と対をなすもので、「4chan」から広まった、犬の画像(「かぼす」の画像)にコメントを入れたものです。こちらも「lolcat」と同じく莫大なミームの流れを生み出しました。

さらに「Doge」は意外なところにも広がりを見せました。2023年、Twitterのロゴが青い鳥から「かぼすちゃん」に一時的に変更になったのです。コナミコマンド(↑↑↓↓←→←→BA)を打ち込むとこの犬アイコンが回転するという裏技も仕込まれたことから大いに話題となりました。

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一時的にアイコンが右図のように変更された

タネ明かしとしては、インターネットミームとして広まった「Doge」をモチーフにした仮想通貨「Dogecoin(ドージコイン)」をTwitterオーナーのイーロン・マスク氏が"推し"ていたことから実現したことのようです。ちなみに、直接関係があるかは分かりませんが、Twitterのアイコンが青い鳥に戻ると「Dogecoin」は価格を下げています。

最近はインターネットミームにインスパイヤされた仮想通貨が数多く登場しています。これらは「ミームコイン(meme coin)」と総称されます。「かぼすちゃん」の影響力が大きかったのか他にも柴犬が名付けられた「Shiba Inu Token(SHIB)」という仮想通貨も登場しており、人気です。

「もふもふ系」の動物

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インターネットで画像や動画の投稿が楽になったこと、InstagramやTikTokの人気によって動物の写真や動画が一気に広まることになりました。「もふもふ系」など様々な動物が人気です。以前は、インコやオウム、シマエナガやカワウソなど比較的小型の動物が人気とされていましたが、アルパカやカンガルー等もバズる時代になりました。

これは「lolcat」や「Doge」のような写真や動画を他の表現と組み合わせることが誰でもできるようになり、バズらせる手法が一般化したことも影響していると考えられます。

まとめ:猫たちと楽しく暮らしたい

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ストレスが多いといわれる現代社会に疲れた人々に、猫をはじめとする多くの動物が癒しを与えてくれています。

それが多くのSNSなどでの発信を促し、ネットスラングを生み出し、それがインターネットミーム化したり、社会現象化したりすることによって、ミームコインなどの経済効果を生み出しています。その根源を見失わないようにして、これからも猫たちと幸せな共存生活を送っていきたいですね。

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執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。