ソフトウェア開発では、プロジェクトを計画どおりに進めるために、進捗状況の正確な管理が不可欠です。作業量やタスクの進行状況を感覚だけで判断すると、遅延に気付いたときには手遅れになっていることもあります。
そこで、プロジェクト管理で重要な指標となるのが進捗率です。適切に進捗率計算を行うことで、遅延の迅速な発見・対応が可能になります。しかし、進捗率の計算方法が分からず、感覚的な管理に頼っているケースも少なくありません。
本稿では、プロジェクト管理(PM)における進捗率の基本から計算方法、おすすめツールまで紹介します。ソフトウェア開発プロジェクトを円滑に進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1. プロジェクト管理における進捗率とは
プロジェクト管理における進捗率とは、計画されたタスクや作業の進み具合(完了度合い)をパーセンテージで表した指標です。
たとえば、プロジェクト全体の進捗率が50%の場合、全体の作業量に対して半分が完了していると判断できます。また、タスクAが40%、タスクBが70%のように、個々のタスク単位で進捗率を可視化することも可能です。
進捗率のメリットは、作業の進み具合や完了度合いを客観的に示せる点です。進捗率を含めたプロジェクト計画を立てれば、進捗率の計画と実績を比較することで、遅延の有無や進行状況を感覚に頼らず判断できます。
ソフトウェア開発では、進捗率の正確な計算・把握がプロジェクト全体の円滑な進行に欠かせません。進捗率の種類や計算方法を理解することは、正確な進捗管理の第一歩です。
2. 代表的な進捗率計算方法
ソフトウェア開発における進捗率計算では、「WBS」を用いる方法と「EV」を用いる方法が代表的です。ここでは、これら2つの進捗率計算方法について、簡単に紹介します。それぞれ特徴が異なるため、プロジェクトの規模や目的に応じて使い分けましょう。
2-1. WBSを用いた進捗率計算
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト全体を細かいタスクに分解し、階層的に整理して管理する手法です。各タスクの進み具合をパーセンテージで表し、その合計から全体の進捗率を算出します。
たとえば、5つのタスクのうち3つが完了していれば、進捗率は60%と計算することが可能です。この方法はシンプルで分かりやすく、小規模プロジェクトやチーム内での進捗把握に向いています。
ただし、単純にタスク数で進捗を計算すると、タスクごとの作業量や重要度に差がある場合に実態と乖離しやすいのが難点です。そのため、タスクの難易度やボリューム感に応じて重み付けを行い、進捗率の計算に反映させる方法もあります。
2-2. EVを用いた進捗率計算
EV(Earned Value)は「EVM(Earned Value Management)」という手法の一部であり、実際に完了した作業の「出来高(作業量)」を数値化した指標です。下記のような指標を用いて、プロジェクトの進捗だけでなくコスト効率を評価できます。
| 指標 | 説明・計算式 |
|---|---|
| PV(計画予算) | 特定の時点までに完了しているはずの作業を予算換算した値。 |
| EV(出来高) | 実際に完了した作業を予算換算した値。 |
| AC(実コスト) | 実際に消費したコスト。 |
| SPI(スケジュール効率指数) | 計画に対する進捗の効率を示す指標。1より大きければ計画よりも進んでおり、1より小さければ遅れている。 SPI=EV÷PV |
| CPI(コスト効率指数) | コスト効率を示す指標。1より大きければ計画よりも少ないコストで進んでおり、1より小さければ計画したコストを超過している。 CPI=EV÷AC |
たとえば、1週間あたり10万円の予算を投じ、10週間で完了させる計画のプロジェクトを考えましょう。5週目完了時点で30万円分の作業が完了し、40万円を消費した場合、各指標は次のように計算できます。
PV(計画予算):10万円×5週 = 50万円
EV(出来高):30万円
AC(実コスト):40万円
SPI(スケジュール効率指数):30万円÷50万円 = 0.6(計画より遅れている)
CPI(コスト効率指数):30万円÷40万円 = 0.75(予算を超過している)
SPIとCPIがともに1を下回るため、このプロジェクトは「計画より遅れており、かつ予算も超過している」と判断可能です。このように、EVMは計算がやや複雑になるものの、進捗とコストの両面からプロジェクトの現状を把握するのに役立ちます。
3. 進捗率計算におけるポイント
進捗率計算はポイントを押さえることで、より有効性を高めることが可能です。ここでは、進捗率計算における4つのポイントを紹介します。
3-1. 客観的な判断基準を設定する
進捗率を計算する前に、客観的な判断基準を設定しておきましょう。基準があいまいなまま進めると、人によって評価の仕方が異なり、算出結果にぶれが生じやすくなります。
たとえば「設計書の作成」というタスクに進捗率を設定する場合、記載項目ごとに進捗をカウントするのか、機能単位でカウントするのかによっても数値は変わります。また、タスクの完了条件を「下書き完了」とするのか「レビュー承認済み」とするのかでも、進捗の扱いに大きな差が生まれるでしょう。
明確な基準がなければ、正確な進捗率を算出することはできません。何を単位にカウントするのか、どの時点で完了とみなすのか、など事前にチーム全体で取り決めておきましょう。
3-2. 可視化して関係者と共有する
計算した進捗率は、表や図を用いて関係者と共有しましょう。数値だけでは状況を把握しにくく、情報が伝わらなければ遅延への対応も遅れてしまいます。
たとえば、作業の開始や終了を横棒で示す「ガントチャート」を使うと、進捗状況を直感的に表現できます。進捗率を可視化することで、関係者は状況を素早く把握可能です。
また、定期的に進捗報告会などを設け、チームメンバーや関係者と共有する時間を作ることも大切です。プロジェクトの透明性が高まり、遅延や問題が発生した際の早期対応につながります。
3-3. 数値と実態の乖離に注意する
数値上の進捗率が計画どおりに見えても、作業内容と一致しない場合があります。たとえば、半分のタスクを終えて進捗率が50%となっていても、残タスクの負荷が大きく実際には30%程度しか進んでいない、といったケースは少なくありません。
こうした数値と実態の乖離は、WBSを用いたタスクベースの進捗率計算で生じやすいです。EVを用いた進捗管理を導入する、タスクの難易度やボリューム感に応じた重み付けを行うなど、乖離を防ぐ工夫を取り入れましょう。また、進捗報告会などで進捗率の妥当性を客観的にレビューするのも効果的です。
また、進捗報告を行う際には、数値だけでなく、現状に関するコメントも報告するようにしましょう。数値で40%となっていても、これが進んでいるのか遅れているのかは判断できません。報告者が客観的な報告コメントをすることで、ステークホルダーに現状が伝わりやすくなります。
3-4. 進捗管理ツールで効率化を図る
進捗管理や進捗率の計算を手作業で行うのは時間がかかるうえに、ミスも生じやすくなります。効率性や精度を考えると、進捗管理ツールを使うのがおすすめです。
ツールを使えば進捗率を自動で計算でき、ミスも抑制できます。また、ガントチャートでの可視化やクラウドでの情報共有など、チームの連携強化に役立つ要素が豊富です。
正確な進捗把握と管理の効率化を両立させるためにも、進捗管理ツールの活用を前向きに検討すると良いでしょう。
4. ソフトウェア開発の進捗率計算に役立つ進捗管理ツール
ここでは、ソフトウェア開発の進捗率計算に役立つ進捗管理ツールを3つピックアップして紹介します。
4-1. QualityTracker
「QualityTracker」は、バルテスが提供するテスト管理ツールです。進捗率の計算にはEV(出来高)を採用しており、テストの進行状況を正確に可視化できます。テストケースの資産化や共有をクラウド上で行えるのも特長です。
テスト計画の作成やケースのインポート、ダッシュボードでの状況把握など、管理に必要な機能が揃っています。加えて、担当者の生産性に応じた自動アサイン機能も搭載しており、属人化を防ぎながら柔軟な進捗管理を実現します。
料金は1人あたり月額1,430円(税込)~と低コストで、30日間の無料トライアルも提供されています。「テストの進捗を正確に把握したい」「チームで効率的にテストを運用したい」といった場合には、QualityTrackerが有効な選択肢となるでしょう。
4-2. Redmine
「Redmine」は、オープンソースのプロジェクト管理ツールです。タスク単位で進捗率を管理でき、各作業の進行状況をガントチャートやカレンダーで直感的に把握できます。
課題管理やWikiによるナレッジ共有など、チーム内の情報共有を加速させる機能が豊富にあります。プラグインを追加すれば、進捗率の自動計算やレポート作成など、開発現場に合わせた柔軟な機能拡張も可能です。
4-3. Jira
「Jira」は、Atlassian社が提供する多業種対応のプロジェクト管理ツールです。ソフトウェア開発ではアジャイルに強く、スクラムやカンバンなど幅広い手法に対応しています。タスク単位で進捗率を管理でき、各作業の状態を専用のボードやガントチャートで視覚的に把握できます。
課題管理やスプリント計画、レポート作成などの機能も充実しており、チームの作業状況をリアルタイムで確認可能です。アジャイル開発の進捗を正確に管理したいプロジェクトに適しています。
5. まとめ
プロジェクト管理における進捗率とは、計画されたタスクや作業の進み具合(完了度合い)をパーセンテージで表した指標です。WBSやEVを用いた計算方法があります。
正確に進捗率を管理するためには、客観的な判断基準の設定や進捗管理ツールの活用がポイントです。進捗率の計算や管理の際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。


