IT組織には様々な課題が潜んでいます。プロジェクト管理、要件定義、テスト、人材採用、組織によって課題感は異なります。
「プロジェクトにおける課題を何となく認識してはいるが、どこから改善に着手すれば良いのかわからない。」
特にどの組織、プロジェクトも共通して「IT組織をどう作っていくか?」というお悩みを抱えているのではないでしょうか? プロジェクトの実作業を行いながら、組織改善を行うことは容易ではありません。限られたリソースの中で効率的に課題改善を行わなければならないからです。
本記事では、テスト専門会社でソフトウェアテスト業務を行いながら、外資系コンサルティングファーム出身のノウハウを生かして、システム開発全体のプロセス改善支援も行うバルテス日下部が課題改善のコツを解説します。
今回話を伺ったプロ

- 日下部 隆治
バルテス株式会社 第一ソフトウェアテスト事業部 事業部長 兼 エンタープライズシステム品質向上サービス部 部長
東京大学農学部を卒業後、大手証券会社に入社。その後、外資系コンサルティングファーム、大手製造業情報システム子会社、国内大手コンサルティングファーム、テスト専門会社を経て現職。IT業界で上流工程を中心に25年以上の経験を積み上げ、直近5年間はテスト専門会社にて大型プロジェクトのテスト工程支援を数多く実施。
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- プロセス改善に着手したいが、有識者工数に余裕がない
- PMOの導入を検討しているが、課題が明確でなく躊躇している
- どの工程にどれくらいのコストをかけていくべきか分からない
- もくじ
クライアントの課題感の根底にあるのは「IT組織をどう作っていくか」
――プロジェクトのプロセス改善に悩む方はどのようなお客様でしょうか?
私(日下部)はこれまで、システム開発全体のプロセス改善支援として多数のプロジェクトに携わってきました。プロジェクトのPMO、テストプロセスの改善支援、標準化支援など多岐にわたります。その中で、特にプロジェクトの品質改善についてのお悩みを抱く方が数多くいらっしゃいました。各プロジェクトの担当者から頂くお悩みは「業務を遂行するのに手一杯で課題改善に着手できない」「課題が多すぎてどこから改善すべきかわからない」「品質基準が明確ではない」等、プロジェクト毎に課題感が異なってきます。
しかし、一方で所属長やIT担当の役員の方は「IT組織をどう作っていくか?」といったお悩みをお持ちの方が多くいらっしゃいました。多い、というかそれに尽きると言っても過言ではないくらいです。
――「IT組織をどう作るか?」という根本課題に対して、内部改善が難しい理由とは?
内部改善が難しい理由は、担当案件の業務を遂行するのに手一杯で課題改善に着手できないという「リソース不足」の問題があります。
その他にも、自分達の組織やプロジェクトの改善点を自分達で判断すること、そして自己批判することの難しさが理由にあると思います。自己批判の中には所属組織への批判、上司への批判なども含まれることが多く、非常に言いづらく、ディスカッションなどを行っても本音が引き出せないことも多いです。
私はコンサルティングファーム時代に様々なお客様からご依頼を頂きましたが、"リソース不足"と"自己批判の難しさ"、この2点が外部コンサルティングファームを活用する理由だと思いますし、外部から指摘を貰うことへのニーズを感じました。
また、「同業界のほかの会社と比べてどうなのか?」というお悩みに対してアドバイスができることも価値だったと思います。
――"品質"について課題を持っているお客さんはやはり多いのでしょうか?
品質に課題を持っているお客様は非常に多いです。ただ、業種によって品質に関する課題感はかなり異なります。意外に思われるかもしれませんが、例えば金融系の会社の場合"品質には困っていない"という会社が実は多いのです。何故なら、"品質"について膨大なコストをかけているからです。反面、「品質にかけるコストの割合が大きすぎる」というお悩みを持っているので、テストケースの効率化などで我々が参画するケースが多いです。
一方で、小売業、製造業系の会社は品質について悩んでいる場合が多いです。不具合が非常に多い、品質基準が明確でないなど、背景は様々です。
課題改善の鍵は"スピード"と"成功体験"
――課題改善に取り組む場合のコツや重視しているポイントはなんでしょうか?
課題改善に取り組む際、私が特に重要だと感じているポイントは2つです。それは"スピード"と"成功体験"です。
私は"スピード"に非常に価値があると考えています。とにかく早くアウトプットを出すということには、高い価値があります。時間を十分にかけて完璧なものを出すよりも、数時間で大枠のアウトプットをすぐに出して擦り合わせていく方が結果的に完成度の高いアウトプットに繋がるからです。
"成功体験"というキーワードも非常に重要です。課題改善に取り組む場合、シンプルに手数が増える(工数が増える)ことになるので、現場レベルでは面倒だなぁと、難色を示される場合が多いです。いままでのやり方通りやっていくのがもちろん楽ですから。そんな意識をまず変えていくことが大事です。
意識を変えるのに効果的なのは"改善の効果"を感じることだと思います。そのために成功体験を積み上げていくことが大切で、積み上げやすいのは"短期間かつ小さな改善"です。
「2年続けたら効果が出る」といったような改善施策があっても、いきなり着手できないのが実情ですよね。我々が提案する課題改善施策でも「まずは小さな改善から実施していきましょう」と提案しているのは"成功体験"を積み上げる効果があるからです。
もちろん"継続"していくことも大事ですので、課題分析-施策検討-KPI設定を行い、継続的に計測する「仕組み作り」もポイントだと思います。
短期間で課題改善ができるフレームワークを作り上げた
――"スピード"が重要だということですが、どのように課題改善を実現するのでしょうか?
"スピード"感ある課題改善に取り組むために、ナレッジのフレームワーク化を行いました。
コンサルファームにいた時は日常的に業務分析などを行っていました。初期段階の分析だけで3か月~半年などの期間、かつ課題抽出~施策検討だけで数千万円規模の案件も多くありました。しかし、これだけの期間とコストをかけても、出てくる課題というのはサプライズでないこともありました。お客様が想像していた通りの課題感、それにファクトを示した大量のドキュメントが添付されているイメージです。それでも十分価値は出せており、お客様も満足はされていましたが「もっと安く早くできるのではないか?それがさらなる価値に繋がるのではないか?」と考えました。
そこで、コンサルファーム時代のナレッジから重要なエッセンスだけを抽出してフレームワーク化しました。「クイックサーベイ」としてその部分だけ切り出したサービス提供も行っています。
――大手のコンサルティングファームが提供するサービスとは何が違うのでしょうか?
大手コンサルティングファームの提供するサービスは、中間成果物やドキュメントが山ほどあります。クイックサーベイではアウトプットの本質はさほど変わらず、1か月で改善の糸口をつかみ、成功体験を提供することで改善活動を継続して行えるようにサポートするところにフォーカスしています。
また大手コンサルティングファームの場合、クイックサーベイが行う「細かい改善施策」などはほぼなく、「数十億のシステムを構築しましょう」のような大規模な改善提案を行います。開発規模の大きなプロジェクトにはそういったニーズはある一方、構築したばかりの開発組織で軸となるプロセスを固めたい、といった足元の改善を求めているお客さんも多くおられる。
そういった意味で、現実的かつ実行可能な"痒い所に手が届く"施策提案を行えるのがクイックサーベイのポイントです。
また「短期間/低コスト」を売りにしていますが、お客様からは「このボリュームと質の成果物が1か月で出てくるとは思わなかった」とのお言葉を頂きます。
"IT組織全体の課題を解決ができる"組織を作る
――今後、どんな価値を提供していきたいと考えてますか?
2020年4月より、エンタープライズプロジェクト専門部署を立ち上げ、『エンタープライズシステム品質向上サービス』として課題の解決からテストまで一貫した支援を行える体制を作っています。
品質改善だけでなくIT組織の課題に改善策を提供し、実際に改善を支援できるサービスを考えています。
――拡大する領域にサービス提供していく中で、自社の社員にどのようなアドバイスをしていますか?
まず、当たり前ですが「お客様の立場になって実行性の高い提案を行う」ということは意識するように伝えています。あとは、先述した通りスピード感が一番重要だと説いています。お客様が想定しているより早く、例えば半年~1年かかかると思われていることを1か月程度で行うような意識です。あとは「何が何でも目標を達成する」という意識を持つように、と教えていますし、自分自身も意識しています。
アドバイスだけではなく、社内研修の講師も担当しています。バルテスは社内研修が非常に充実しているのですが、私は主に品質コンサルタントとしてのマインドやナレッジを研修テーマにしています。
テスト専門会社として「組織改善」にフォーカスしている会社さんは少ないと思うので、「クイックサーベイ」を始めとするサービスが弊社の強みになっていくと思いますし、社員の意識も変わってきています。
今後は"テスト"というスコープだけではなく、より"IT組織全体"をスコープとしていきたいですね。
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- プロセス改善に着手したいが、有識者工数に余裕がない
- PMOの導入を検討しているが、課題が明確でなく躊躇している
- どの工程にどれくらいのコストをかけていくべきか分からない