書評「ソフトウェア開発で伸びる人、伸びない人」

概要

オブジェクト指向技術のコンサルタント・講師として多くの開発者に接してきた著者は、伸びる開発者には共通した特徴があることを発見した。伸びる人・伸びない人の特徴を分析し、ソフトウェア開発者として成功するための条件を明らかにする本。新人から中堅までの、成長したいと願うすべてのソフトウェア技術者に、あるいは、部下の育成に悩む管理者にお薦めする。
多くのSEの支持を得たベストセラーの第2版であり、特別付録として、音楽大学出身で開発者となった著者が、自分の学んだ専門分野（音楽）で得た考え方を、開発実務に当てはめて考察する、好エッセイが追加された。

本書の使い方

第一部（第1章～第4章）：ソフトウェア開発で成長するために必要なスキルを知ることができる。
第二部（第5章～第7章）：開発者として、「幸せ」になるための考え方を知ることができる。
特別付録：ソフトウェア開発を、別の専門分野から考察することで、問題解決のヒントを得ることができる。
いずれも、読者の関心に応じて、好きなところから読むことができる。

何を学べるか

第一部 ソフトウェア開発で伸びる人、伸びない人
第1章 よくある疑問
ソフトウェア開発で伸びる人について話題が上るとき、必ず取り上げられる疑問がある、と著者。 「企業にとって扱いやすい人と優れた技術者は違う？」「優等生は優れた技術者になる？」「常識ってなんだろう？」「技術力があれば伸びていく？」「技術者ってサラリーマン？」 以上、5つの疑問の背景を掘り下げて考察する。

第2章 ソフトウェア開発で伸びない人
著者は「伸びる・伸びない」を分けるのは、技術力以上に、重要なのは、短期間では直せない姿勢、習慣であると説く。 伸びない人には共通の特徴がある。本章では、まず、チェックリスト形式で伸びない人の素養を診断する。その上で著者は伸びない人に共通の問題として「プライド」「解決策偏重」「正解はひとつ主義」「受け身」「階級闘争」の5つを挙げる。本章では、この5つ問題点を掘り下げて原因と解決策を考察する。

第3章 ソフトウェア開発で伸びる人
伸びる人には共通の特徴がある。著者は伸びる人に共通の特徴としてまず第一に「年齢に関係なく、素直に努力すること」を挙げる。次いで伸びる人に共通の基礎スキルとして「言語力」「目的志向」「構造力」「日々の習慣」「人との関係」「美的センス」「プロ意識」の7つを挙げ、それぞれについて解説を加える。

第4章 これからのソフトウェア技術者
これからのソフトウェア技術者は深い専門性を持ちつつ、幅広い周辺知識を身に着ける必要があると著者は説く。自らの適性を知り、専門性を深める方法を考える。 加えて、管理者にこそ、高い技術力が必要であると著者は説く。技術力の低下が管理力の低下を招く可能性を指摘する。

第二部 ソフトウェア開発で幸せになれる人、なれない人
第5章 ソフトウェア開発で幸せになれない人
ソフトウェア開発で幸せになれない人には共通の特徴がある。まず、チェックリストで幸せになれない人の要素を診断する。 その上で著者は幸せになれない人に共通の問題として「会社依存症」「課題待ち症候群」「減点主義」「過剰期待」「ネガティブ思考」「井の中の蛙」の6つを挙げる。本章では、この6つ問題点を掘り下げて原因と解決策を考察する。

第6章 ソフトウェア開発で幸せになれる人
ソフトウェア開発で幸せになれる人には共通の特徴がある。 「会社と仕事を別の実態と考える人」、「問題と人を分けて考える人」、「粘り強く考える人」「他人への期待を明らかにする人」「肯定系の言葉を使う人」「業界における自分の位置を知る人」の6つのタイプを挙げて、それぞれ解説する。

第7章 技術者としての幸せとは
技術者としての幸せを実現するためのヒントを挙げる。 「クリエイティブであること」「仕事を楽しくすること」「プランニングのスキルを上げる」「底まで落ちたら這い上がればいい」「会社や他人に依存しない」「組織や他人にコントロールされない」など、いずれも示唆に富むトピックを挙げて考察する。

特別付録 音楽とソフトウェア開発
第8章 音楽とソフトウェア開発
音楽大学でパイプオルガンを専攻し、開発者となった著者のエッセイ。音楽とソフトウェア開発には共通点があるとして、①正確な技術が要求される、②思想としての側面を持っている、③国際性がある、の3つの共通点を挙げ、考察する。そして、著者は優れた音楽、ソフトウェアはともに「構造が美しいこと」を指摘する。

第9章 演奏とソフトウェア開発
本章では音楽における演奏に焦点を当てて、ソフトウェア開発との共通点を考察する。 演奏に必要な3つのスキルとして①解釈力、②技術力、③集中力、を挙げ、開発技術者にもそのスキルが重要であることを述べる。

第10章 オーケストラとプロジェクトマネジメント
オーケストラと開発プロジェクトは似ている、として、①大規模かつ複雑なプロジェクトを扱う、②異なる役割を持った人々から構成される、③協調が重要、の3つの共通点を挙げる。オーケストラの仕組みを分析することは、困難な開発プロジェクトを成功させるために大変役立つ、と著者は説く。