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テスト技法・工程 2023.02.15
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オフショアテストのメリット・課題とは?実施前に確認すべき2つのこと

執筆: Qbook編集部

ライター

オフショアテストのメリット・課題とは?実施前に確認すべき2つのこと

ソフトウェア開発を海外に委託するオフショア開発。ソフトウェア開発の中でもテスト工程だけをオフショアで行う企業も増えています。

そんなオフショアテストは、コストの削減をメリットとして捉え、取り入れる場合がほとんどでしょう。しかし、そのメリットの裏には、成果物の品質低下とコミュニケーション不足による弊害などといったリスクもあります。

そこで、本記事では、オフショアテストとは何かを再確認しながら、オフショアテストで得られるメリットや、懸念されるコミュニケーションや品質問題などについて解説します。

もくじ
  1. オフショアテストとは
  2. オフショアテストを実施するメリット
  3. オフショアテストの3つの懸念点
  4. オフショアテスト実施前に必ずチェックすべきこと
  5. まとめ

オフショアテストとは

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オフショアテストとは、日本国内のソフトウェア開発におけるテスト工程を海外に委託する開発手法であり、外務省の定義では越境取引のサービス貿易形態です。

大まかにいえば、プログラミングなどの開発工程は日本国内のITエンジニアが行い、テスト工程を海外のITエンジニアに分担します。

必要なときに必要なリソースを補い、かつコスト削減を実現することが、オフショアテストの狙いの1つです。日本国内ですべての開発を行うよりも、海外のリソースを使う方が、人件費が安くコスト削減になるため、近隣諸国に委託するオフショア開発という手法が広まりました。

近年では、日本国内のITエンジニア人材が不足しているため、海外のITエンジニアの協力を得ることで人手不足を解消するという目的もあります。

オフショアテストを実施するメリット

テスト工程だけを海外に委託するオフショアテストのメリットについてご紹介します。

コスト削減が期待できる

オフショアテストに限らず、オフショア開発という手法全体の大きなメリットがコスト削減です。

日本国内と海外の労働賃金差や価格差をうまく活用すれば、日本国内ですべての開発をするよりも、海外へ委託したほうが人件費を抑えられるというメリットがあります。

例えば、日本国内の企業がフィリピンやベトナムに子会社を置き、そこで現地のITエンジニアを獲得して、システム開発のテスト工程をうまく分散するといった具合です。

これにより、フィリピンやベトナムといった国の雇用にも貢献でき、Win-Winの関係が築けるでしょう。

日本と現地でタイムリーな受け答えができる

オフショアテストは基本的に、日本の近隣諸国にて行うことがほとんどです。それは、人件費などのコスト面が安いことに加え、時差の関係もあります。

例えば、日本とフィリピンの時差は1時間、ベトナムとの時差は2時間です。この時間帯であれば、日本とオフショア現地でタイムリーな受け答えが可能となります。

日本時間と現地時間で、勤務時間にコアタイムが生まれますので、タイムリーなやり取りが問題なくできるメリットもあるのです。

人材不足の解決策になる

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日本国内のITエンジニアは年々減少しています。エンジニアだけではなく人口が減少しているので、この問題を国内だけでカバーすることは難しいでしょう。

オフショアテスト(開発)ならば、必要なITエンジニア人材を補うことができます。優秀な人材は多くいますので、全体的な技術レベル向上も期待できるでしょう。

効果的にテストを実施できる

システムのテストを、開発に関わる人で行った場合、イレギュラーなオペレーションを見落としがちです。システムの流れを熟知している人よりも、システムを知らない第三者によるテスト実施が、システムテストの手法としても効果的だといえます。

テスト工程だけをオフショアにて委託することは、テスト手法としてもメリットがあるのです。

オフショアテストの3つの懸念点

多くのメリットを持つオフショアテストですが、実施するにあたってはいくつかの懸念点があります。

① コミュニケーションを取るのが難しい

システム開発の工程を、話す言葉が異なるITエンジニアと連携することは、大きな懸念点だといえます。製造業に比べると、サービス業では仕様やイメージを「言葉で伝える」部分が大きいからです。

もちろん、オフショアテストを実施する際には通訳を入れることがほとんどですが、語学とニュアンス把握の能力は別ものです。同じ国で生活する者同士の会話では、相手のニュアンスをくみ取って理解できますが、異なる言語でニュアンスまでを把握することは、やはり困難なのです。

例えば、Web画面のオペレーションに関するチェック項目を日本人がテストした場合です。テストを実施する中で、「期待通りの結果は返ってくるけどレスポンスの遅さが気になる」などの部分があれば、それを問題点として挙げてくれるでしょう。

テストでは、このような指摘も欲しいところですが、そのニュアンスがテスト実施者に伝わらなければ、「結果がOKなので、多少のレスポンスの遅さは気にしない」という事態が起こり、せっかくテストをした項目が手戻りになるといった場合もあります。

このような食い違いは、密な意思疎通ができるか否かで決まります。コミュニケーション不足は品質低下を招く大きな原因となるのです。

② 文化の違いによるすれ違い(認識齟齬)が起きやすい

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システム開発の進行に大きく影響するものに、国それぞれの文化があります。例えば、日本人は時間通りに行動することが当たり前です。しかし、国が違えばその時間感覚も異なる場合があります。また、仕様書の不明点を質問して突き詰める国もあれば、曖昧な仕様書のまま、書いてあることだけを忠実にこなす国もあります。この場合、暗黙の了解は通じません。

これは、能力の違いではなく文化の違いです。

また、職務定義を明確化する国では、アウトソースする業務も細分化されています。広範囲の業務を各個人が実施しているジェネラリストの多い日本とは、ビジネススタイルにも違いがあります。複雑な業務プロセスも細分化することで、海外へのアウトソースもしやすくなるでしょう。

オフショアテストは日本国外のITエンジニアや企業と連携してプロジェクトを進めます。そのため、相手の国の文化を理解しておくこと、つまり最低限の文化リテラシーを学んでおくことも、オフショアテストを実施する上では必要なことなのです。

③ 品質基準のズレが起きやすい

上記で挙げたコミュニケーションや文化リテラシーへの懸念は、オフショアテストで懸念される「品質問題」に直結します。

テスト仕様書が読めなかったり理解できなかったりということはありませんが、指示書のニュアンスにすれ違いが生じることはあるでしょう。また、テスト工程で利用する仕様書で、「これはやってくれるだろう」という暗黙の了解は通じないため、内容の詳細までしっかりと仕様書に落とし込む必要があります。

加えて、文化の違いは「良しとする基準」にも影響します。極端な例えですが、画面上の「ボタン」をクリックしたあとの動作が正常でも、レスポンスが遅い場合は「レスポンスの遅さ」を課題として報告すべきです。しかし、オフショアテストでは「仕様書通りに動作した」という事実を持ってテスト完了とし、レスポンスが遅いことは特に気にしない、といった‟ズレ"が起こります。

このように、コミュニケーションの取りにくさや感覚(文化)の違いによって、日本企業および発注者がOKとする品質に達しない場合があるのです。

オフショアテスト実施前に必ずチェックしておくこと

オフショアテストの懸念を払拭するために行いたい、実施前のチェック事項を見ていきましょう。

日本語理解および双方の文化に精通した人材がいるか

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オフショアテストを実施する上で、必須となるのが日本語を理解できる人材です。もっといえば、日本でITエンジニアとして活躍したことがある現地人材、あるいは現地での職務経験がある日本人を、プロジェクトの橋渡し役として配置しなければなりません。

日本語と現地の言葉を扱えるのは当然として、双方の文化にも精通している必要があるということです。

コミュニケーション不足の解消や、文化の違いを加味しながら調整できる人材でなければ、上述した懸念が実際に起こってしまいます。

日本と現地でのシステム開発は、齟齬のないように意思疎通を行うことが最も重要なポイントです。

契約書や手順書は詳細まで綿密に作成されているか

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オフショアテストでは、契約書や仕様書、手順書などの書類も高い品質で作成する必要があります。特に、日本国内でやり取りする際に「暗黙の了解」として通じる部分も、詳細まで明確化しておきましょう。

仕様や手順は、誰が見ても実行できるほど具体的であることが、オフショアテストの品質懸念を払拭する方法です。また、初期段階のうちに、日本と現地で詳細なレビューをしておきましょう。このレビューこそ、言葉の壁や文化の違いを超えるための手段だといえます。

もちろん、一度だけレビューをすればよいというわけではなく、テスト工程のスケジュールに、ポイントごとに合同レビューを組み込み、テスト工程が完了するまでをしっかりと追うことが大切です。

まとめ

オフショアテストとは、日本国内のソフトウェア開発におけるテスト工程を海外に委託する開発手法です。オフショアテストによって、大幅なコスト削減につがなります。

ただし、共にプロジェクトを進行する相手とは、言語や文化の違いがあることを意識しておかなければなりません。

国内だけのシステム開発では通用する暗黙の了解も、オフショアテストでは通用しません。コミュニケーション不足の解消や文化の違いを、どのようにカバーするかを発注段階で明確にしておきましょう。

オフショアについては、「オフショア入門~生産性向上プラスワン戦略」にて、さらに詳しく解説した資料を用意しております。オフショアの事例紹介もありますので、オフショアテストをご検討の際には合わせてご確認ください。

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執筆: Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。