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AI関連 2024.01.18
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【2023年版】今さら聞けない!? AI関連の基本情報のまとめ

執筆: 大木 晴一郎

ライター

【2023年版】今さら聞けない!? AI関連の基本情報のまとめ

2022年に「Stable Diffusion」や「Midjourney」「ChatGPT」といった生成AI(ジェネレーティブAI)の登場をきっかけにAIブームに火がつきました。

本記事では、「第4次人工知能ブーム」ともいわれる状況を概観するため、AIにはどんな種類があるのか、どんなことが期待され、何が懸念されているのか、2023年時点でのAIの基本情報をまとめてご紹介します。

もくじ
  1. そもそも「AI」とは何か?
  2. AIの種類
  3. AIが便利で幸福な社会を実現する
  4. AIの懸念点
  5. 直近の注目ポイント
  6. まとめ:「ELIZA効果」にご注意を

1.そもそも「AI」とは何か?

「AI」の定義と簡単な歴史

そもそも「AI」とは?

AI(人工知能:Artificial Intelligence)とは、直訳すると「人工的な知能・知性」のことです。1956年にダートマス大学で行われた会議でジョン・マッカーシー教授がこの言葉を提唱し、ダートマス会議の提案書上で用語として用いられてAIは新分野として生まれました。ちなみに1958年、ジョン・マッカーシー教授は人工知能の研究で使いやすいプログラミング言語「LISP」を設計しています。

AIは計算とコンピュータを用いて知能を研究する計算機科学の一分野です。今では、コンピュータやロボットなどの機械に実用に適したレベルから人間と同等あるいはそれ以上の知的な機能を実現させる技術を示す語として使われています。計算機(コンピュータ)・機械による「知的」な活動を可能にする技術や方法のことだと言い換えることもできますが、何がどう「知的」なのかといった点を巡っては未だに議論が続いています。

現在、AIは自然言語処理や画像認識、音声認識、予測分析といった分野において、高度な処理を行うことができるコンピュータシステムとして一部で実用化が進み、また一方で研究が進められています。とくにビジネス、医療、農業の発展に欠かせないとされ、製造業や交通といった様々な分野で活用されています。その重要性と社会発展に対する貢献への期待は高まる一方です。

簡単版:AIの歴史

AIの概念は1956年に登場しました。当初は早期実現可能と目されていたようですが、そうはならず、1950年代から1960年代にかけては人工知能の理論的基盤の研究と確立が進められたり、「LISP」といったツール類が用意されたりする成果がありました。この時期を「第1次人工知能ブーム」とすることがあります。

「第2次人工知能ブーム」とされる1970年代から1980年代には、専門家システム(エキスパートシステム)等が発展し、実用レベルにまで達したといわれていますが、曖昧な事例への対処が難しいことなど限界も明らかになっています。数学の問題を解いたり、チェスや将棋に挑戦したりするAIが登場し、話題になったのもこの時期くらいからです。

1990年代から2000年代にかけてはAI技術の応用分野が拡大し、機械学習やニューラルネットワークなどが発展しました。1997年、IBMのチェス専用AI(スーパーコンピュータ)「ディープ・ブルー(Deep Blue)」がチェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ氏に勝利して大きなニュースとなっています。

今話題のディープラーニング(深層学習)は2010年代初頭から大きく発展し、AI研究への注目を集めるきっかけとなりました。とくに「AlexNet」が登場した2012年以降、急速に認知が広まって「第3次人工知能ブーム」が到来したといわれています。

「第3次人工知能ブーム」により、高性能なAIを構築するには、モデルの「深さ」が不可欠であるという認識が広まりました。深くすることで計算コストは高くなりますが、高性能なGPUを用いて学習することで高性能なAIとなります。この認識の広まりがAIへの投資を加速させた一面もあり、この後、大きな動きとうねりを見せるようになりました。

2015年、今話題の対話型AI「ChatGPT」で注目を集めているOpenAI Inc.が設立されました。そして、2020年ごろから生成AI(ジェネレーティブAI:Generative AI)が話題となり、2022年には入力されたテキストから画像を生成する「Stable Diffusion」や「Midjourney」が発表されたのを期に人気に火がつき、2022年11月に「ChatGPT」がリリースされると世界中で大ブームとなりました。現在の状況を「第4次人工知能ブーム」とする記事も目につくようになりました。

誰もが使える「わかりやすい」AIが登場したことで、今後はAIの一般化が加速し、ビジネスの現場だけでなく、生活のあらゆる場面でAIが使われるようになると予測できます。これからAIがどのように社会に浸透していくか、どう活用されるのか注目を集めています。

「強いAI」「弱いAI」

AIには、「強いAI」と「弱いAI」があります。この考え方は、哲学者のジョン・サール氏が提案しました。

実は「強いAI」は現在でも実現しておらず理論上の存在です。例としては、SF映画『2001年宇宙の旅』(1968年)に登場するコンピュータ「HAL」や同じく映画の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(Avengers: Age of Ultron)』に登場する悪役「ウルトロン(Ultron)」などが「強いAI」ではないかと思います。

「弱いAI」は特定の知的な仕事をこなすことができます。自己意識を持って問題を解決することはできませんが、言語処理をしたり、画像認識や音声認識をしたりすることができます。現在あるAIはこの「弱いAI」ですが、例えば『Google Chauffeur』などといったクルマの自動運転や話題の『ChatGPT』など、人間にとって十分役に立つ機能と実力を持っています。

AIの3分類

AIは大きく3つの分類があるとされています。「特化型人工知能(ANI)」と「汎用人工知能(AGI)」「人工超知能(ASI)」の3つで、このうち「強いAI」であるAGIとASIは2022年時点ではまだ実現できていません。

特化型人工知能(ANI:Artificial Narrow Intelligence)

特化型人工知能(ANI)は、ある特定の環境や仕事に特化した人工知能のことをいいます。です。例えば、画像認識や音声認識などが挙げられます。基本的に現存するAIの全てがこの分類に入ると考えられます。すでに実用化されており、音声認識やクルマの自動運転などビジネスや生活の利便性向上に役立てられており、今後も活用が進むと予測されています。

汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)

汎用人工知能(AGI)は、人間の行うあらゆる知的作業を理解したり、学習したり、実行できる人工知能「強いAI」のことです。目標となる「知能」をどう定義して判断の基準とするかは統一的な意見がなく、まだまだ実現には時間がかかるという予測もありますが、一方、世界中で研究が進んでいることもあり、実現は近いと予測をする人もいます。

人工知能の知能を測定する方法として有名なのが数学者のアラン・チューリング氏が考案した「チューリング・テスト」があります。氏(Alan Turing)は「機械は考えることができるのか」という問いを議論することは無駄だと考え「チューリング・テスト」を考案しました。2014年にはロシアのAI「Eugene Goostman」が史上初の「合格」になったと報じられています。

2010年には、Apple共同設立者の1人スティーブ・ウォズニアック氏が「ウォズニアック・テスト」、別名「ミスター・コーヒー・テスト」という汎用人工知能の判定試験を考案しました。

人工超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)

人工超知能(ASI)は、人間の知能を超越する知能を持った人工知能です。人間をはるかに上回る知能があるという、現時点では仮説上の存在といってよいでしょう。上でお伝えした「HAL」や「ウルトロン(Ultron)」はここに分類されるのではないでしょうか。

AIは人間を超えるか?

前述したように、2023年時点で人工超知能(ASI)や汎用人工知能(AGI)は完成していませんが、ある段階で技術的特異点(technological singularity または singularity:シンギュラリティ)を迎える可能性があると指摘されています。

これは、一度、自律的に動作する「強いAI」が完成すると、再帰的にバージョンアップが繰り返されて、人間の想像力が及ばないほど優秀な知性が誕生するという考えで、レイ・カーツワイル氏が提唱しています。シンギュラリティは来るのか来ないのか、来るとしたらいつなのか、といった議論がずっと続いています。

2.AIの種類

AI技術は、使われている技術によってルールベースAIや機械学習、ディープラーニングなどといった種類があります。

ルールベースAI

ルールベースAIは、あらかじめ専門家などの知識やルールをプログラム化したルールをもとに問題を解決したり、状況を判断したりします。高度な知識を専門家でなくても利用できるのがメリットです。最近では、WEBサービスの一部でユーザーサポートの「入り口」として使われていることもあります。

医療診断のサポートや金融のリスク評価などで使われており、専門家システム(エキスパートシステム)とも呼ばれます。ルールを設定したり、内容を変更したりするには人手による設定が必要です。曖昧な質問に答えるのが苦手とされています。

機械学習とディープラーニング

機械学習とディープラーニングは、近年におけるAIの主要な分野であり、広範囲にわたり重要な役割を果たしています。

機械学習

機械学習(Machine Learning)は1959年に科学者アーサー・サミュエル氏によって作られた言葉です。大量のデータを統計的に学習・解析してルールを自動的に生成するAIのことです。「訓練データ」または「学習データ」を使って学習をします。大量のデータから統計的アルゴリズムを使って自動的に学習して予測モデルを作ります。機械学習は、さらに大きく3つのカテゴリーに分けられます。それは「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つです。

ディープラーニング

ディープラーニングは機械学習の一種であり、近年のAIの研究・開発における主流がディープラーニング(Deep Learning:深層学習)です。人間の脳機能を模倣した深層ニューラルネットワークを使って、概念を階層構造で関連させて学習するのが特徴です。

最近話題となっている『ChatGPT』など「生成AI」はディープラーニングを用いた大規模言語モデル(LLM:Large language Model)です。LLMはニューラルネットワークで構成される言語モデルで、「教師あり学習」を使用して大量のラベルのないテキストでトレーニングされています。2018年ごろに登場したこともあり、正式な定義はまだないとされています。幅広いタスクに対応でき、自然言語で人間とやり取りができることから人気となりました。

機械学習とディープラーニングの違い

機械学習とディープラーニングは、主にアルゴリズムが異なるとされますが、特徴抽出のプロセスも異なります。機械学習は、与えられたデータからパターンを学習するために統計的手法を用いていますが、特徴抽出は通常、人間が行います。一方、ディープラーニングは多層ニューラルネットワークを使用して、自動的に特徴を学習し、高度なパターン認識を行います。

機械学習は比較的単純なパターンから複雑なパターンまで幅広く学習できますが、複雑なパターンを処理する場合、より多くの特徴量エンジニアリングや前工程プロセスを経る必要があります。一方、ディープラーニングは自動的に特徴抽出を行うことができるため、複雑なパターンを効率的に認識できるのがポイントです。そのため、ディープラーニングはでは画像認識や音声認識、自然言語処理といった高度なタスクに対応できます。ただし、膨大なデータセットと高度な計算能力(通常はGPUを使用)と演算処理能力が必要とされます。これは、ディープラーニングの多層ニューラルネットワークが多数のパラメータを持つため、これらのパラメータを処理するには大量のデータと計算能力が必要となるからです。

その他のAI

遺伝的アルゴリズム

他では、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)で作られたAIが知られています。遺伝的アルゴリズムとは、生物の進化のメカニズムを模倣した最適化手法の一つです。複雑な問題に対して優れた探索能力があり最適な解を見つけることができるとされています。1975年にミシガン大学のジョン・H・ホランド教授(John Henry Holland)によって提案されました。

3.AIが便利で幸福な社会を実現する

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AIが進歩することで、とくに医療や農業、科学技術といった分野で効率化や精度の向上につながることが期待されています。

AIの性能が上がることで、医薬品の開発スピードの向上や病気の治療や予防がこれまで以上に効率的に行われるようになったり、農業作物の育成効率が上がったりすることで、人々のWell-Being(幸福)向上につながると予測されています。

AIによって、次のような社会的メリットがもたらされる可能性が高いとされています。

  • 労働力不足を解消したり、人件費を削減したりすることができる。
  • 産業分野、農業分野などでの生産性の向上、効率化
  • 自動運転や危険発見技術等の進歩による社会安全性の向上
  • 自動翻訳等の進歩によるコミュニケーションの深化と広がり

現時点で存在している「弱いAI」は人間の判断力、思考を完全に置き換えることはできないので、AIを適切に利用できるようにする議論や準備が必要になります。

4.AIの懸念点

AIの進歩には懸念も表明されています。物理学者スティーブン・ホーキング氏はAIが制御不能なほど進化をした場合、人類滅亡の可能性があると懸念を表しています。同様の見解をビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏といった著名人も多く示しています。

そこまで重大な危機ではなくても、AIによってフェイクニュースが大量生成されたり、ディープフェイクなどで偏向した意見が拡散されたりする可能性も指摘されています。とくに軍事目的での利用はリスクが大きいとされています。

また、AIを活用した監視技術の発達によって、プライバシーや自由が制限され、人権が侵害されるおそれもあります。AIの「学習データ」がインターネットから得られている場合の著作権やAIが生成した絵や文章が既存のものに類似している場合、著作権の扱いはどうなるのかといった議論もあります。

AIの技術開発には、利用者が意図していない場合を含めた悪用リスクを考慮して、倫理的・社会的な観点を重視する必要があると指摘されています。

5.直近の注目ポイント

今後のAI関連技術の動きを見る上での注目ポイントは関連分野との関わりとリスク等に対する動きの二面があります。

関連分野との関わり

近年のAI関連の注目ポイントは、以下のようなものが挙げられます。

量子コンピュータの発展=AIの進化

従来のコンピュータよりも高速に大量の計算が実行できる量子コンピュータにより、AIがより複雑な問題解決を行えるようになったり、より高度な学習を行えるようになったりすることが期待されています。量子コンピュータの発展からは目が離せないでしょう。

製造業等とのコラボレーション=労働力不足の解消

AIによる業務自動化、効率化やロボット制御が進むことで、労働力不足への対応や作業の効率化を図ることができ、工場等の生産性向上が図られていきます。労働力不足の問題解決につながるかが注目ポイントといえます。

バイオテクノロジーの進化=AIの高度化

生態情報を扱う技術が発展することで、AIを連動して活用できるようになり、医療やバイオ産業がさらに進化する可能性があります。

世界の動き

AIの進化に伴って、AIの安全性と倫理性に対する注目が高まっていることを示す動きが見られています。今後のAI開発にも影響を及ぼすと考えられます。

「アシロマAI23原則」(2017年)の影響

「アシロマAI23原則(Asilomar AI Principles)で)」は、アメリカ・カリフォルニア州アシロマに世界からAI研究者と法律、倫理、哲学の専門家等が集って人類に有益なAIが何かを議論してまとめたAI活用の倫理原則・ガイドラインです。AIが人類の利益となるように倫理的問題や安全管理への対策や研究の透明性などについてまとめられています。

EUのAI規則案(2021年)に関連する動き

EUは、AIの倫理的な設計、開発、展開に対する基準を定め、市場へのアクセスを規制するAI規則法案をまとめています。ここでリスクの高いAIシステムに関しては、EU市場に入れる前に独自の評価を必要としています。

Future of Life Instituteの要求(2023年)の波紋

2023年3月に非営利団体「Future of Life Institute」はAIの研究者や技術者に向けた倫理的なガイドラインを提示しました。団体名を直訳すると生命の未来研究所が発表したのは、AIの安全性と倫理性に関する原則です。この要求には、イーロン・マスク氏やスティーブ・ウォズニアック氏ら多くの著名人が署名をしています。

まとめ:「ELIZA効果」にご注意を

「ELIZA効果」とは、会話をしているときにAIが人間と同じような反応をすると、人間がAIの反応に過剰反応する現象のことです。「ELIZA」は1960年代に開発された初期のチャットボットで、単純な言葉遊びを通じて人間と会話することができました。現在と比べたら簡単なシステムですが、それでも「ELIZA」を本物の人間だと錯覚してしまう人がいたのです。

現在のAIは、驚くほど人間のような反応を返してくることがありますし、短時間で信じられない仕事をこなしてくれます。そのため、使っているうちについ本物の人間と勘違いしたり、過剰な期待をしたりしそうになってしまいます。進化スピードが速い今、人間はなによりもその流れに飲まれないようにするのがポイントなのかもしれません。

AI関連
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執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。