ITエンジニアの飛躍に欠かせないコミュニケーションスキル

最終更新日時:2021.11.11 (公開日:2020.02.12)
ITエンジニアの飛躍に欠かせないコミュニケーションスキル

ITエンジニアに必要なスキルは様々ですが、共通して必要なスキルにはコミュニケーションスキルがあります。このスキルの重要性を肌で感じたことがある人は少なくないでしょう。

自分が一生懸命伝えているのに、周りの人に理解してもらえず無力感を抱いたことないでしょうか? その一方で、先輩エンジニアがスパッと報告していて、凄い!格好いい!と思ったことないでしょうか?

自分の説明がうまく伝わらないのは、相手にとって不要な情報もひっくるめて漫然と述べるだけ、ということが多いものです。そこで今回は、「伝わらない報告・説明」の改善方法をテーマとしてお伝えします。

伝わらない時の傾向と問題点

私の経験則ですが、伝わらない場面では以下のいずれかに当てはまることが多いです。

  1. 時系列に起こったことを全部話している。
  2. メールや帳票が文字で真っ黒。余白も少ない。
  3. 本題を説明するための補足(前置き)が細かくて長い。

これらの傾向は以下の問題点を抱えています。

  1. 相手にとって必要な情報もあるが、不要な情報もある(不要な方が多いかも?)
  2. 相手が大事な情報を探さないといけない(でも文字が多く見つけにくい)
  3. 本題が始まらない(物事の本質がつかめない)

なぜこのような問題点を抱えていると言えるのでしょうか?

それは、受け手に必要な情報が、不要な情報に埋もれているからなのです。

伝える時のポイントは、「(伝え手が)情報を伝えること」ではなく、「(受け手が)情報を理解すること」です。報告・説明における主体は、受け手としなければいけません。受け手が理解しないことには、報告・説明が不完全に終わってしまうからです。

報告を受ける側は、全てを知りたいと思っている訳ではありません。状況を判断するための材料が欲しいのです。

伝えるための解決策

それでは、どうすれば改善できるのでしょうか。
その解決策は、相手にとって必要な情報だけにまとめること(=要約)です。

必要な情報だけにまとめるとは、裏を返すと不要な情報を削除するということです。これによって受け手は、不要な情報によって惑わされることが無くなります。理解するための難易度が下がり、理解のスピードが速くなります。この効果は想像以上に絶大で、相手が理解することで、本来話したい内容に議論が集中し、話がどんどん進むようになるのです。

この要約力ですが、試行錯誤を繰り返して磨き上げなければいけないスキルです。
以下のポイントを参考に、実践を繰り返して磨いてください。

要約力を身に付けるためのポイント

要約力を身に付けるためのポイントは以下の3つがあります。

  1. 要約するための基準を持つ (基準=相手が必要とする情報)
  2. 伝える内容を絞り込む(不要な情報を捨てる)
  3. 自分の言葉でまとめる(分からない言葉・用語は使わない(または調べる)

1. 要約するための基準を持つ(基準=相手が必要とする情報)

報告・説明の場面や相手の立場を考えたうえで、相手が必要とする情報を検討します。自分の報告・説明によって、相手にどのような行動をしてもらいたいかを考えることで、相手に提供すべき情報が見えてきます。

例)
作業報告 ⇒ 作業遅延/現場で抱える問題それぞれの解決策について相談に乗って欲しい
   ↓ 相手が必要とする情報(基準)は...

  1. 作業遅延の背景と対策案
  2. 現場で抱える問題の背景と対策案

上記の通り、相手が必要とする情報(基準)を持つことで、相手が必要としない情報も見えてくるのです。

2. 伝える内容を絞り込む(不要な情報を捨てる)

以下の3点で絞り込むと広い場面に応用できます。

  • テーマ
  • メッセージ
  • 裏付け(背景・目的・理由・事例)

『テーマ』

相手に伝えたいテーマ(主題、議題)をできるだけ具体的にしてください。
作業報告する場合であれば、作業報告として何を話すのかをテーマにしなければなりません。

例)作業報告する場合
テーマ:作業遅延の状況と対策(相手への期待:作業遅延対策の相談)
テーマ:現場で抱える問題  (相手への期待:問題の解決策の相談)

注意点ですが、テーマを決めたら、内容が混ざらないように気を付けてください。
例えば、現場で今起こっている問題を話している最中に、リスク(起こるかもしれない問題)について話をしてしまうと、テーマがすり替わったり、問題とリスクが誤って伝わったりする危険性があります。2つのことを話す場合は、必ず別のテーマとします。

また伝えたいテーマがあやふやな場合、情報がほとんど伝わりません。
こちらも気を付けてください。テーマを「作業報告」としてしまった場合、報告の受け手は「作業報告」として何が話されるのか、どんなアドバイスをすべきか、などの迷いが起こってしまいます。

『メッセージ』

テーマについて、自分の考えと相手に期待していることを伝えてください。相手への要求を遠慮することで、報告・説明の完結が遅くなってしまいます。相手への要求は慣れない間は勇気が必要かもしれません。ですが、伝える時の重要な要素なのです。

例)作業報告でのメッセージ
テーマ:作業遅延の状況(報告相手:上司)
メッセージ:見積もりミスにより遅延が発生しているので、増員して欲しい
想定外の仕様変更で作業が増加したので、期限を延期して欲しい

テーマ:現場で抱える問題(報告相手:上司)
メッセージ:スキル不足で作業が進まないので、スキル習得者による講習を開いて欲しい

問題が起こっていても、自己解決の目途が立っている場合は相手の支援は不要です。その際は自分の考えを提示し、アドバイスや承認を求めればいいでしょう。周りの助けが必要な場合や、相談事項がある場合は、要求を明記することが重要です。その際は、要求の核心をシンプルに表現し、分かりやすくしましょう。

『裏付け』

メッセージについて相手に納得してもらうための情報です。できる限り事実(データ)に基づいて示すのが望ましいです。事実が分からない場合は、事実ではないことを明言したうえで仮説を示してもいいと思います。

不要かどうかを迷うような情報は、次の通りに残すと良いでしょう。

  • 文章の場合、備考や参考情報として末尾に付加する
  • 口頭の場合、手持ちデータとして持っておき、必要な場面で示す

3. 自分の言葉でまとめる(分からない言葉・用語は使わない[または調べる])

報告・説明は1回で伝わらないことの方が多いです。その際に、言い換えたり、例をあげたりすることで、相手に理解してもらえることが数多くあります。大切なことは、伝えるべき情報について正しく深く理解することです。言葉の意味や問題の状況などが正しく理解できていなければ、他人に分かりやすく説明することはできません。

要約する力が上達した先にあること

実は恥ずかしながら、私はエンジニアとして10年以上過ぎた時点でも、コミュニケーションスキルに対して苦手意識がありました。ある時に要約力の重要性に気付き、少しずつ磨きました。おかげさまで要約力は過去の自分に比べずいぶんと向上したと感じています。そんな自分に起こった変化を最後に挙げておきます。

  • 報告内容をすんなり理解してもらえた
  • 報告時間が短くなった
  • アピールポイントが明確になり褒められることが増えた
  • 結果として、それまで嫌だった報告が嫌ではなくなった

短くまとまった話は理解を得やすいです。

相手に素早く理解してもらえると、相手から素早く意見が出てきます。
コミュニケーションがうまくできているという実感も湧きました。
この感覚がとても嬉しかったです。

コミュニケーションスキルが苦手だと感じている皆様の「伝わらない苦しみ」が「伝わる喜び」に変わることを願って、第1回を終わりたいと思います。

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執筆者:嶋岡 康広

バルテス株式会社 エンタープライズ品質サービス事業部 マネージャー

独立系ソフトウェア開発企業で、業務系システムのシステムエンジニアとして、システム開発、要件定義・受入テスト、ユーザーサポート窓口、システム運用・保守など上位から下位までさまざまな工程を経験し、エンジニア、ユーザーの両者の視点を学ぶ。 バルテス入社後は、組み込み系テスト業務に従事し、エンジニア、ユーザーの両者の視点からソフトウェアの品質向上に取り組んでいる。