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イベント・セミナーレポート 第3回:Gartner Symposium/ITxpo2012

◆はじめに

 企業のIT戦略及び投資に関して、様々なソリューションの提供やコンサルテーションなどを実施し、世界でも指折り且つ業界最大規模である、独立系ITリサーチ企業のガートナー社が、2012年10月3日(水)から5日(金)までの3日間、ホテル グランパシフィック LE DAIBA(東京・台場)で、

「ITリーダーよ、時機(とき)を逃すな」

をテーマに、Gartner Symposium/ITxpo2012 を開催した。


 筆者は、5日(金)のシンポジウムに出席して、3日間に渡って実施された数多くの貴重なセッションのうち、5つのセッションを聴講する機会に恵まれたが、どのセッションも非常に興味深く、ITを戦略的な観点から捉えたセッションは勿論のこと、具体的な事例を織り交ぜつつ展開したIT戦術に関するセッションについても、企業の経営層・マネジメント層、経営/事業企画・戦略立案担当、ITに関わる機関投資家やアナリストなどの専門家、そしてメディア関係者といった方々の知識と見識をさらに深く、高められる重要な内容であった。

 シンポジウムの概要及び基調講演の内容などは、既に多くのメディアで取り上げられていることから、ここでは筆者が聴講したセッションについて、簡単にご紹介させて頂ければと考えているが、これら貴重なセッションを聴講したお陰様で、嘗て、筆者が情報戦略のプロフェッショナルまたは賢者と呼ばれる方々から、産業社会の発展形態に関する理論及び戦略論をご教示頂き、それを基に道友たちと互いに学び合い、研鑽を重ねた事柄とも、長い年月を経てリンクしていたことを思い起こすことができたため、こちらについては、別途、筆者の愚見も交えつつ述べさせて頂ければと思う。



◆聴講したセッション(※)

1.セッション名 「CIOのチャレンジ」

【講演者(敬称略)】
ガートナー エグゼクティブ プログラム
グループ バイス プレジデント 兼 エグゼクティブパートナー 長谷島 眞時

【概要】

・事業環境の変化と進化するITを背景にビジネスのITへの依存度はますます高まり、CIOの担うべき役割と責任は重要性を増している。
こうした期待にどう応えていくか、そこには乗り越えなければならない制約条件やいくつもの課題が横たわっている。

・戦略の立案から施策の実行まで取り組むべき課題は幅広く、それぞれの置かれた状況で固有のものもあるが、一方でそこには普遍的かつ共通の課題も多く含まれていると考えられる。
そういったものにどうアプローチしていくか、現場での体験を通して得られた知見を今後の実践に生かすべく考察する。

【論点】
・CIOの置かれた状況の変化とは
・CIOの役割とは
・CIOに求められるリーダーシップとは

<聴講レポート>

 ・プロローグ

 このセッションのみ、可能な限り詳しく述べさせて頂きたい。

それは、講演者である長谷島氏と筆者とは前職が同じ組織であり、長谷島氏はCIOであったが、その他大勢のマネジメント層の一人であった筆者にとっては、言わば ”雲の上の存在” に近かった。

 従って、前職時代に直接ご縁はなかったものの、お蔭様で、講演後に短い時間ながらも会話を交わせたことに加えて、講演内容の一部には、僅か5年間で前職の大組織における情報集約化の成功モデルを築き上げた長谷島氏の功績もあり、この辺りは筆者も良く存じ上げていることから、より一層のリアリティと説得力ある内容として認識できたからである。

 その長谷島氏が、昨今、企業のITリーダーの役割や背景等が変わってきており、それに伴いCIOとして行なうべき事や期待される事を踏まえて語られた3つの論点をご紹介させて頂く。



論点1 「拡大するCIOの役割とその方向性」

 CIOの役割を聴講者へ分かり易くするため、「CIOとはChief Information Officerの略だが、その責務並びに役割と、Information=情報との意味づけが不明確なことから、CIOのI(アイ)とはアイマイの ” I ” 」と語られた長谷島氏は、CIOの責務と役割が多岐に渡っている点を、様々な項目を挙げつつ、各々が持つ課題に関して、例えばコストの最適化一つとっても、今年度5%削減が成功したら、翌年度も5%削減が求められる実状にも言及された。

 そのような現状を、「CIOへの期待と高まるプレッシャー」として語られたテーマは、「ビジネス / オペレーション」「リスク / コンプライアンス」「テクノロジ」「IT部門への期待」であった。

 「ビジネス / オペレーション」においては、嘗ては大企業に顕著であった、「グローバライゼーション」「ビジネストランスフォーメーション」「水平分業」「BPO」が、現在は中小企業へも浸透していることから、これらは企業規模に関わらず共通の課題である旨を指摘された。

 「リスク / コンプライアンス」においては、水平分業や海外との協業に伴う問題・課題(特に相手国との間の認識の差による課題)があることに加えて、昨年春の東日本大震災に伴い明確となった「BCP」の重要性にも言及された。

 「テクノロジ」においては、「クラウド」「ビッグデータ」「ソーシャル」「モバイル」などといった、文字通り、日々進歩増加する分野への対応のことを示しており、「IT部門への期待」においては、先述の3つのテーマで述べた内容を踏まえて、「ビジネス環境変化への対応」「コストの最適化」「役割の拡大(フロントオフィス)」を考えていかねばならない旨を強調された。

 このように、機能的にも領域的にも拡大しているシステム(IT)部門は、今や単なる間接部門ではなく、システム部門の外側にある、事業部門の中のIT部門的な組織も取り入れる必要性から、全社的に捉えるべき存在であると、前職時代の実例を織り交ぜながら語られた点は、当時の実状を少なからず存じ上げている筆者にとって、実感を伴った理解であった。




論点2 「CIOのチャレンジ」

 CIOとしての基本戦略を考える上で、「コストの最適化」「IT/IS投資のプライオリティ」「グローバル・ガバナンス」「IT/ISトランスフォーメーション」といったテーマを述べられたが、ビジネス部門とシステム部門との連携強化による組織全体の最適化により、組織に蓄積されたナレッジが強みとなって他社との差異化に繋がる”質”、と、オフショアやアウトソースといったコモディティ領域である”量”、を、上手く分けることが肝要であるという言葉が最も印象に残った。

 なお、ビジネスという短期的視点から成果へ結びつけるための「変化への対応」と、システムという中長期的視点から「変化を創出」していく、といった両輪を上手く動かすためには、概ね5年間かけて行なっていかねばならないと言及された点は、まさしく先述の実績を上げられた、長谷島氏の誠実なる ”生の声” であったと言えよう。



論点3 「CIOに求められるリーダーシップ」

 現状の正確な把握と将来像並びに目標の明確化を述べつつも、プロセスには様々な道程があり、トランスフォーメーションが肝要であること、長い時間とタフな交渉が非常に重要であると言及されたが、マネジメント手法の理解は必須ではなく、寧ろ、声なきビジネスの声を聴けという点が重要である旨を強調された。

 従って、たとえ大変ではあっても、前向きなチャンスとして捉え、CIOとしての期待に応えるべくネアカでいこうという長谷島氏の締め括りの言葉は多くの聴講者に響いたことと思う。

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著者プロフィール


報告者:ラ・ターシュ
日本のデジタル放送の黎明期から、受信機開発と規格策定などに関わり、近年は放送と通信の融合に伴う会合への参加や、関連団体及び委員会のメンバーとして活躍中。


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