概要
「上流工程」ではプログラマやSEとは異なるスキルが要求される。どうすれば上流工程で成功できるのか? 成功する人とつまずく人の違いはどこにあるのか?本書はその疑問に答える形で、これから上流工程を学ぶ人が、必要な心構えと、学ばなければならないスキルにどんなものがあるのかを解説する。また、IT開発者が肉体労働者ではなく、「知識労働者」であるための考え方も解説する。
本書の使い方
第1部:要求を獲得する過程において必要となるスキルについて解説する。 上流工程に携わる全ての人が参考にすることができる。テスト関係者にとっても要求を把握するうえで参考になる。
第2部:ITソフトウェア開発者がプロジェクトにおいて「知識労働者」として活躍するために必要な考え方を解説する。開発部門に携わる人に適している。
何を学べるか
第1部 要求編
第1章 要求の獲得はなぜ難しいのか
プロジェクトの失敗の原因は、要求の扱いに起因するところが大きい。本章では、要求の獲得を難しくしている問題を「人間に関する問題」と「要望の扱いに関する問題」の2つに分けて解説する。 「人間に関する問題」はさらに「要望を出す側」と「要望をとらえる側」にわけて説明する。 「要望の扱いに関する問題」は「要望を適切にフィルタリングをしていない」という観点から分析する。
第2章 要求を獲得できる人、できない人
要求を獲得できる人の素養を簡単なチェックリストで診断する。 その上で要求を獲得するスキルを、分類力、定義力、コミュニケーション力、技術力、決断力、問題発見力の6つの力に分けて解説する。
第3章 問題のパターン
現実のプロジェクトで扱う問題は「ビジネスに関する問題」と「システムに関する問題」の二つに分けられる。要望を収集する際には、まずそのどちらであるかを判断する必要がある、としてそれぞれの問題を詳しく解説する。
第4章 要望収集プロセスのパターン
要望をうまく収集するためのプロセスのパターンを紹介する。 要望収集を、「どちらに属する問題なのかを区別する」「何が問題なのかを獲得する」「何をしたいのかを獲得する」「どのようにしたいのかを獲得する」「要望を収集する」の5つのステップに分けて解説する。
第5章 フィルタリングのパターン
収集した情報を適切にフィルタリングできなければ、プロジェクトは失敗する。要望を「実現性」「網羅性」「無矛盾性」の3つの観点からフィルタリングすることの必要性を解説する。
第2部 プロジェクト編
第6章 非知識労働の開発プロジェクト
ソフトウェア開発は肉体労働か?開発分野に浸透している、「非計画性」、「スコープが維持できない」、「他責主義」、「その場主義」、「不勉強」、「ビジネスベーシックの欠如」といった非知識労働的な考え方と、その弊害を解説する。
第7章 IT業界にまつわる誤解
コンピューターを使っていれば知識労働なのか?という問いのもとに、IT業界の仕事について考察し、IT分野には「知識労働」「肉体労働」「サービス労働」の3つの側面があることを解説する。
第8章 知識労働としての開発プロジェクト
ドラッカーのいう知識労働者であり続けるための条件を紹介する。 「計画性がある」「知識と技術をバランスよく持つ」「現場主義である」「クリエイティブである」「プロ意識がある」の5つの条件を紹介する。