概要
80年代から現在に至る日本におけるソフトウェア品質管理の歴史を振り返り、ISO9000シリーズ、CMMI、PMBOK等の国際標準の利点・限界も整理した上で、著者の経験を踏まえてソフトウェアの品質管理業務の全体像をわかりやすく簡潔に解説する。
本書の使い方
第1章 ソフトウェア品質活動の歴史動向を学ぶことができる。
第2章 ソフトウェア品質管理業務のフレームを整理して学ぶことができる。
第3~5章 品質管理業務における実践的な勘どころを学ぶことができる。
第6~7章 これからの品質管理業務の方向性を学ぶことができる。
読者の興味関心に応じて読むことができる。とりわけ品質管理業務に従事する読者には第2章、第3~5章から多くのヒントを学ぶことができる。
何を学べるか
第1章 これまでのソフトウェア品質管理の動向
1980年代のQC活動から現在に至る、日本におけるソフトウェア品質管理の動向をまとめる。品質管理と関係が深い、ISO9001、CMMI、PMBOKなどの国際標準モデルを取り上げ、それぞれの概要、効用を紹介する。また、グローバルな動向などを解説する。
第2章 ソフトウェア品質管理の体系
様々な標準モデルに共通な視点を整理して、品質管理の全体的なフレームワークを提示する。 品質管理の対象として「成果物」「人材マネジメント」「プロジェクトマネジメント」「プロセスマネジメント」「品質経営」の5つの対象を挙げる。次にこれら各管理対象を「品質要件」「品質設計」「品質評価」「品質保証」という4つの品質管理の活動区分に分割して整理する。そのうえで、標準モデルとの関連を含めて品質管理の取り組みのポイントを解説する。
第3章 品質管理力強化のロードマップ
品質管理力を強化するシナリオに対して、標準モデルをどのように活用したらよいかについて解説する。その際に陥りがちな失敗や挫折のパターンを「モデル三幻則」として整理し、具体的な事例を交えて、標準モデルの効用と限界、挫折しがちなポイントや、その原因などを解説する。
第4章 ソフトウェア品質管理の原点に戻って
ソフトウェア品質管理の「今後」を考える上で、再度、品質とは何かの原点を考察する。トヨタ生産方式に代表されるハードウェア分野での生産革新活動の成功に着目し、「現場・現物・現実主義」「流れを作る」「無駄の徹底排除」「活人」「自律的改善」「原価と品質の作りこみ」「見える化」の7つの基本原則をソフトウェア品質管理に当てはめて考察する。
第5章 現場主義のソフトウェア品質管理
ソフトウェア品質管理においても、ハードウェア分野における成功要因である「現場主義」は重要である。しかし、実際にその考え方を組織内に定着、徹底させることは容易ではない。本章では現場主義の重要な要件を「現場三原則」としてまとめ、その効用と限界、導入にあたっての注意点や、徹底させるためのポイント、そして現場主義とモデル活用の融合について解説する。
第6章 ソフトウェア品質管理技術の新しい動き
トップダウン型の標準モデル指向と、ボトムアップ型の現場主義を融合して、両者の特徴を生かすことが今後求められる。こうした中、今後主流となる可能性を秘めたいくつかの品質管理手法を紹介する。 トヨタ生産方式のソフトウェアへの応用、アジャイル型開発プロセス、クリティカルチェーン・マネジメント、PSP(Personal Software Process)/TSP(Team Software Process)、プロダクトライン開発、などを紹介する。
第7章 今求められる品質管理の像
顧客や市場が要求している、品質価値をとらえていくことが今後ますます重要となる。そのための改革の取り組みのための枠組みを提示する。あわせて、日本と欧米との間で、品質管理についてのパラダイムシフトが20~30年周期で起きている歴史に着目し、これからの日本の可能性を考察する。