概要
ITプロジェクトにおいて、上流工程の段階で、後工程に起こりうるリスクを見える化するにはどうすればよいのか。本書は、この問題を解決するにあたって、必要な考え方、ツールの使い方、そして経験豊かなプロジェクトマネージャーのノウハウをまとめた一冊である。要件定義から基本設計における、プロジェクトマネジメント、リスクマネジメントの勘どころを学ぶことが出来る。
巻末付録には、本文で紹介したツールを掲載する。
本書の使い方
第1章~第2章:本書の概要をつかむことが出来る。
第3章~第5章:マネジメントのツールを事例に即して学ぶことが出来る。
第6章~第8章:第5章までの基本を押さえたうえで、実践におけるマネジメントの勘所を学ぶことが出来る。
何を学べるか
第1章 「見える化」の目標
昨今のITプロジェクトの実情を紹介し、上流工程における「見える化」が出来ていないことの問題点を挙げる。その上で、後工程で起こりうるトラブルを未然に気付くための手法を紹介することが本書の目標として掲げられる。
第2章 上流工程における「見える化」の全体像
上流工程を見える化するにあたって、「定性的見える化アプローチ」「定量的見える化アプローチ」「統合的見える化アプローチ」の3つのアプローチが有効であることが述べられる。
第3章 定性的見える化アプローチ
本章では「定性的見える化アプローチ」の考え方を詳しく解説する。とりわけ、潜在的リスクを見える化する有用なツールとして、俯瞰図、チェックシート(自己評価シートとヒアリングリート)、事例集という3つのアプローチを、豊富な図解例で紹介する。
第4章 定量的見える化アプローチ
要件定義化から基本設計にかけて、客観的、定量的にプロジェクトの動きを把握するためには、何のために、どのようなデータを測定すればよいのかを解説する。測定項目リスト、導出尺度の見方と、そこからわかることの事例、定量的管理指標の分析事例などを紹介する。
第5章 統合的アプローチ
リスクを統合的な視点で特定するための実践的な方法として「統合的アプローチ」を説明する。その際に有効なツールとして「リスク分類表」を紹介する。リスク分類表は、これまでの章で紹介した様々なツールを紐付け、文字通り「統合」してリスク判断を下すツールである。
第6章 曖昧性と不確実性のマネジメント
ITプロジェクトは他の業種のプロジェクトに比べて、圧倒的に曖昧性と不確実性が多い。その上で、その曖昧性と不確実性をどのようにマネジメントするのかを説明する。そしてプロジェクト・マネジメントにおける勘所、およびリスク・マネジメントにおける勘所を事例を交えて具体的に紹介する。
第7章 見切りながらのプロジェクト推進
プロジェクト・マネジメントにおいて重要なのは、「ドミナント・アイテム(プロジェクトの成否にかかわる本質的問題)」を的確に把握し、現時点において何が一番重要であるかを「見切る」ことにある。見切りには判断材料に基づく「良い見切り」と、情報不足で行う「悪い見切り」があることを押さえたうえで、良い見切りの事例を紹介する。また、熟練マネージャによる示唆に富む座談会も掲載する。
第8章 プロジェクトを取り巻く環境変化と課題の俯瞰
本章では、ITプロジェクトの失敗の実例を分析することで、現在のITプロジェクトを取りまく環境の変化と、取り組むべき課題をとらえる。その上で、上流工程が抱える課題と、その対策を説明する。
付録 見える化のツールと関連資料
各章で紹介された見える化ツールの具体例を紹介する。
自己評価シート、ヒアリングシート、測定項目リスト、事例集、リスク分類表を掲載する。